あえて「結論を出さない」人が持つ思考の技術 正解のない時代、みんな無理をしなくていい

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やはり理想は、人それぞれが持っている資質、気質、才能が、自然な形で発揮されることだ。せっかち、のんびり屋、直感派、論理派、飽きっぽい、粘り強い、閃きに長ける、記憶力に長ける……などなど、それらが個性となり、組み合わさって、全体として番組の力となっていくことだろう。

それぞれがそれぞれのスタイルで、リラックスし参加できる場。スタッフだけでなく、出演してくださる方々にもそう思っていただくことは、本当に重要だ。

たとえば、「バラエティーだから、ハキハキと明るく」などという固定観念が、そのまま強迫観念になってしまったら、最悪だ。「お仕事」として「明るく振る舞う」のは、その本人にも無意識に歪んだストレスを残し、その引きつった笑顔は、決して番組のためにもならないだろう。映像は正直だからだ。

たとえば、『ニッポンのジレンマ』のような、対話が主軸となる番組の収録を思い浮かべてほしい。さまざまな言葉が自由に行き交うよう、出演者もスタッフも、無理な繕いをすることに無駄なエネルギーを使うことなく、自分の心に正直に関わってほしいのだ。そしてそのためには、そのテーマ、内容を自らのことに引きつけ、自らの言葉で考えてもらえるようなゆとりを生むことが大切になる。ちゃんとテーマを消化する時間、腑に落ちるまでご自身で考え、自分の言葉にしてもらう時間だ。

仮にその話題に気が乗らない出演者がいたとする。そこでも無理はしなくていい。「大事なテーマだから、皆で考える」……、もちろん、そういう目的があるからこそ、番組サイドとしてはそのテーマを設定しているわけだが、その「大事さ」を、出演者も、自分自身の生理感覚、皮膚感覚で納得できるところまで考えて落とし込んでもらうプロセスが大切だからだ。

あるいは、テーマに納得できなければ、「どうして今日はこの話から始めるんですか?」という発言から始まってもいい。MC(司会者)である古市憲寿さんが、開口一番、すでに疑問として提示してくれることもある。

テレビは空気を映し出す

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番組のメインの司会者だからといって、「良い子」になる必要はないのだ。このひとことのおかげで、皆、楽になり、何を言ってもよい場として、さらに空気がほぐれるのだ。

こうしたやりとりがあるおかげで、中途半端に納得して話に加わってもらうより、むしろ、その壁を越えていこうとする過程での発見があるかもしれない。そして、なにより、こうした開放度が、映像には定着される。テレビは空気を映し出すのだ。

仕事の要には、人間への洞察がある。心理的な抵抗があれば、それを口にできる、また自分のやりやすい形を提示できる、流儀を見つけられる……大事なのは、そんな開放的な場を作ること。みんな、無理をしなくていい。

丸山 俊一 NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサー/立教大学特任教授/東京藝術大学客員教授

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まるやま しゅんいち / Shunichi Maruyama

1962年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。「欲望の資本主義」「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」「欲望の時代の哲学」などの「欲望」シリーズのほか、「ネコメンタリー 猫も、杓子も。」「地球タクシー」などをプロデュース。過去に「英語でしゃべらナイト」「爆笑問題のニッポンの教養」「ソクラテスの人事」「仕事ハッケン伝」「ニッポン戦後サブカルチャー史」「ニッポンのジレンマ」「人間ってナンだ?超AI入門」ほか数多くの異色教養エンターテインメント、ドキュメントを企画開発。著書に『14歳からの資本主義』『14歳からの個人主義』『働く悩みは「経済学」で答えが見つかる』『結論は出さなくていい』など。

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