「チケットキャンプ」が突然終了した深刻事情 無策どころか、転売業者に対する優遇も

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それまでは目立った対策がなかったどころか、転売業者に対する優遇措置まで行っていた。転売サービスとして後発だったチケットキャンプは、顧客獲得に向けた施策として大手転売業者に対して通常よりも安い販売手数料を提示。業界最大手になった後も優遇措置は恒常化し、サービス停止時点まで続けていた。

フンザの創業者、笹森良代表取締役。今回の責任をとり、12月27日に辞任した(撮影:梅谷秀司)

こうした高額転売問題に関して、調査委員会は「チケットの二次流通仲介事業のプラットフォーム自体が直ちに違法であるとの評価を受けるものではない」としつつ、「企業活動においては、単なる法令の遵守にとどまらず、社会的な公正や倫理観・道徳観が求められている」と指摘。

そして「本件サービスに関連して商標法等の違反の嫌疑で捜査当局による強制捜査をも受けた事実等に鑑みれば、本サービスを今後も存続させるか否かを含めて慎重に検討すべきものと思料する」と結論づけている。

転売問題がすべて解決するわけではない

留意したいのは、チケットキャンプの終了でチケット転売問題がすべて解決するわけではないということだ。チケットを転売できるサイトはチケットキャンプ以外にも多数存在しており、チケットキャンプのユーザーがそちらに流れる可能性は高い。チケット転売に対するニーズそのものが消滅したわけではないからだ。

転売で利益が生まれる根本にはチケットの人気と定価が比例しない点があり、そこが改善されない限り営利目的で転売活動を行う誘引は残る。また、音楽やスポーツのチケットは何カ月も前に応募しなければいけないが、行けなくなったときに払い戻しが不可能なことが多い。そのため、営利目的でなくともチケットを転売したい売り手も数多くいる。

一部のイベントやコンサートでは、ユーザー同士でチケットのやりとりを行う公式サービスの整備や、人気に応じてチケットに価格差を付けるといった動きが出ているが、今のところ広がりは見られない。チケットキャンプ消滅後も、便利で健全なチケット流通に業界全体で取り組んでいく必要がありそうだ。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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