スズキ「クロスビー」はデカハスラーにあらず 全長3.7mに抑え、小型SUVのニッチ市場狙う

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スズキの小型車「イグニス」。コンパクトクロスオーバーSUVのジャンルに属する。新型のクロスビーは、イグニスと同じAプラットフォームを採用しているが、サイズが一回り大きい(撮影:今井康一)

月間販売目標は2000台。価格は税込み176万5800円から。シャシーには小型車「イグニス」と「ソリオ」と同じAプラットフォームを採用。同じプラットフォームながら広い室内空間を目指し、クロスビーの3サイズはすべてビッグだ。自社競合する可能性もあるイグニスと比べると、全長はイグニスよりも60ミリメートル長い3760ミリ、全幅は10ミリ広い1670ミリ、全高は110ミリも高い1705ミリに達する。

一方、他社の小型SUVを見ると、トヨタ「C-HR」やホンダ「ヴェゼル」など人気が高い車種はいずれも全長は4000ミリを超えてさらにビッグだ。ただ、高橋チーフエンジニアは「4000ミリ未満サイズへの支持が高い。クロスビーは3700ミリの全長で運転しやすくて取り回しがいい。乗ってもらうとわかるが、広さは数値以上に感じるはずだ」とアピールする。このサイズのクロスオーバー車は現在のところ、国内では競合がないという。軽SUVのハスラーを発売したときも話題となったが、今回もスズキが得意とするニッチ市場を狙う手法で、小型SUVの潜在需要を取り込む構えだ。

クロスビーで小型車のラインナップが出そろう

スズキの新型「クロスビー」の荷室。助手席と後部座席を畳むと、サーフボードも積むことができる。スズキはアウトドアやスポーツなど幅広いシーンでの活用を想定する(撮影:尾形文繁)

スズキは特にここ最近はAセグメントと呼ばれ、軽自動車よりも大きい小型車に力を入れてきており、イグニス、ソリオに続き、クロスビーで主力3車種が出そろった。ソリオは日常使いでファミリー・多人数、イグニスはパーソナルで趣味・オフロードから日常にも使える。さらに今回のクロスビーで最後の空白地だったファミリー・多人数で趣味・オフロードも楽しめる市場に投入できたことで、すべてのピースがそろった。

2016年度にスズキは国内で約64万台を販売。そのうち、軽自動車は53万台余りで全体の8割超を占める。依然として軽自動車販売が屋台骨であることは変わらないが、足元では伸びしろのある小型車の強化を進める。年間目標だった10万台は今年11月に突破し、2年連続で大台を達成。さらに今回新たな目標として、年間12万台を目指す方針をブチ上げた。もっとも12万台も「まだ通過点」(鈴木社長)としており、小型車の拡大意欲は強い。

かつてのスズキは小型車といえば、軽自動車「ワゴンR」を大きくした「ワゴンRワイド」や「ワゴンRプラス」などがあったが、今回はクロスビーという名前に賭けて一から作り上げ、デカハスラーとは違うという強い信念がある。軽自動車から登録車へ本格的にラインナップを広げ始めたスズキ。クロスビーは新たな挑戦への試金石となりそうだ。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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