「新線初日に脱線」米列車事故はなぜ起きたか 特急列車が高速道路に転落し大惨事に
列車は、まず先頭の機関車と客車8両ほどが脱線してカーブ外側方向に軌道を外れ、機関車と3台の客車が橋下の高速道路に落下している。一方で、後ろの4両の客車はいったん軌道に残ったが、脱線して跳ね返って戻ってきた客車に押し出される形で2両がカーブ内側に脱線してそのまま高速道路に転落、下敷きとなった1両は大きく破壊されている。
この事故は、ワシントン州の肝入りで建設された高速化のための「客車専用バイパス軌道」である新線で発生した。バイパスが必要になったのは、長年使用してきた本線が貨物輸送のためにパンク気味であったのと、線形が悪く速度が稼げないこと、そして本線には「単線のトンネル」があり、そこがネックになっていたというのが理由だという。そこで、海沿いで線形の悪い本線に対して、旅客専用の高速線を高速道路5号線に沿って建設したというわけである。
このバイパスは非常に高規格で建設されている。北東から高速道路に沿って進んできた線形は良さそうであり、写真を見る限りバラストも枕木も新品だ。だが、事故の発生した高速道路を跨ぐ陸橋には、大きなペンキの落書きがされているのである。
拡大写真を見ると、路盤や線路は新しいのだが、この陸橋自体は相当古そうだ。さらに、直線部分の枕木は新しいPC(コンクリート)枕木だが、カーブでは色が変わっており、木製になっているようだ。恐らくこの場所には古いローカルの貨物線があって、新線建設にあたってはその一部を流用したのではないだろうか。
橋の手前に急カーブ
問題は、今回の「501号」のように北東方向から走ってきた場合には、橋に進入する直前が急な左カーブになっているということだ。写真で見たところ、直線からなだらかにカーブへとつながる「緩和曲線」を描いて少しずつ曲線半径を小さくしていくのではなく、いきなりきついカーブに入っている。
報道によれば、カーブ進入位置には「黄色い三角」の標識があり、これは「制限速度30マイル(時速48㎞)」を表すという。一方で、その前の直線の部分は「時速80マイル(128㎞)」で走行できることになっている。ということは、時速128㎞からいきなり48㎞まで減速しなくてはいけない箇所ということになる。
複数の報道写真からは、この脱線が相当な衝撃を伴ったことがうかがえる。アメリカの鉄道車両が極めて頑丈な作りであることを考えると、制限速度の時速48㎞で進入したのではなく、相当な高速で突っ込んで速度超過のために遠心力で脱線したと考えるのが自然と思われる。
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