所得1億円超の金持ちほど税優遇される現実 所得税は60年以上も歪められ続けている
2014年度からようやく税率は20%になったが、この数字も先進諸国の中では低い。2016年3月23日、参議院財政金融委員会で当時の財務省の佐藤慎一主税局長(前事務次官)は、野党議員からの「1億円以上の株式売却益に対する日本および欧米諸国における税率は?」との質問に対して、「日本は20%、アメリカはニューヨーク市の場合30.726%、イギリス28%、ドイツ26.375%、フランス60.5%」と答弁している。
所得1億円を超すと税負担率は下がっている!
前述のように、株式譲渡益や配当所得など金融所得は、富裕層に集中している。国税庁の「2014年分申告所得税標本調査結果」によると、株式譲渡益と配当所得が各3000万円超の人数はともに全申告者の1割前後だが、彼らの所得は配当所得で全体の7~8割、株式譲渡益で8~9割を占めており、その比率は年々上昇している。高所得者への「富の集中」が進んでいるのである。
高所得層ほど全所得に占める株式譲渡益の比率が大きくなる傾向が顕著であり、年間所得50億円超の層の所得の9割以上は株式譲渡益である。それゆえ、彼らにとって、2012年末に誕生した第2次安倍晋三政権による株高政策は大変な恵みだったろう。2013年度までは税率が10%で、2014年度からは20%に上がったとはいえ、所得税の最高税率45%の半分以下で済んでいるのだから、濡れ手で粟のようだった。「税負担の公平性」を第一義としたシャウプ勧告からは遠く外れている。
このように、高所得層の所得の大半を占める株式譲渡益に対して、税率10~20%と低率の分離課税が適用されてきたから、「高所得者ほど所得税負担率が小さくなる」という奇妙な現象が続いている。
株価が急騰した2013年度における申告納税者の所得階級別の所得税負担率を見ると、所得1億円までは負担率が上昇していくが、1億円を超すと負担率が下がっていく。翌2014年度から税率が20%になったから、高所得層の税負担率は若干上昇しているが、1億円を境に負担率が下がっていく傾向は変わらない。
給与所得者は所得税を源泉徴収されるから、節税の余地はない。これに対し、株式譲渡益が集中している富裕層は合法的に巨額の節税ができる。これこそが、今日の格差拡大の最大の要因である。
2018年度税制改正では、このように空洞化著しい所得税の財源調達機能や所得再分配機能の回復を目指す改正が望まれた。しかし、自民党など与党が、そうした改正にはいっさい手を付けなかったのは事実である。
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