阪急が新線建設にやる気を出した4つの理由 なにわ筋連絡線・伊丹空港連絡線…計画続々

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新線と阪急線のジャンクションとなる十三駅の将来像も不透明だ。

伊丹空港へ乗り入れる大阪モノレールに阪急も出資している。伊丹空港の年間利用者数は約1500万人だが2004年から2割以上減った(筆者撮影)

なにわ筋連絡線の十三駅は地下ホームを想定している。阪急の角会長も、今年の株主総会で言及した。そうなると、地上を走る宝塚線や神戸線、京都線との直通運転は無理である。現在線とホームを地下化すれば話は別だが、人口密集地であるがゆえに立体交差化には膨大な建設費と工期が必要だ。具体化する気配もない。地下ホームから地上ホームへの乗換が必要なら、新線に対して期待通りの需要を見込めるのか。精査が必要だろう。

伊丹空港連絡線も、微妙なところだ。現状でもバス輸送が充実しているうえに、阪急宝塚線蛍池駅で接続する大阪モノレールもある。将来、リニアができたら羽田便の大幅削減の可能性があると指摘されており、投資には慎重になるべきかもしれない。

政治に左右される大阪の鉄道建設

この25年間で、大阪圏における鉄道利用者は大幅に減少した。この先の見通しも厳しい予測が出ている。阪急沿線は比較的恵まれたエリアだが、2016年の年間輸送人員は6億5000万人と1991年の2割減に落ち込んだ。東京の大手私鉄とは環境が異なる。

海外からの個人旅行者の増加、梅田地区の各開発の進展などプラス要因はあるが、大阪府が誘致している万国博覧会やカジノ構想にどこまで期待できるのか。北陸新幹線やリニア中央新幹線の開業時期はどうなるか。不透明要素が大きい。

今後は、政治の動きにも注目したい。2018年4月に大阪市営地下鉄が民営化され、10月に2025年万博の開催地が決定される。秋には2回目の「大阪都構想」の住民投票がうわさされている。2019年には大阪市長と大阪府知事のダブル選挙の予定だ。

新線の建設費はどのように捻出するのか。阪急単独での整備はありえないので、大阪市や大阪府、国の財政的支援が前提となる。大阪維新の会は、大阪市営地下鉄を継承する新会社の株式を売却して原資にするアイデアを示したこともあるが、続報は聞かない。

大阪では新線建設の是非が政治情勢に左右されがちなので、阪急の希望が素直に反映されるとは限らない。計画が本当に必要なのか、立ち止まって考えるべきタイミングに来ていると思う。

森口 誠之 鉄道ライター

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1972年奈良県生まれ。大阪市立大学大学院経営学研究科前期博士課程修了。主な著書に『鉃道未成線を歩く(国鉄編)』『同(私鉄編)』など。

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