三木谷社長が「規制改革」を主張し続けるワケ 「このままでは日本の自動車産業も危ない」

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三木谷:そうは言っても、こればかりは戦略的リソースをどこに投入するか、という問題がありますから。これまでも土台部分は作ってきました。これからそこを本格的にやっていくということです。

山田:楽天グループにはクレジットカードもポイントもある。これは広告事業を進めるうえでは大きな武器ですよね?

三木谷:ポイントもありますけど、何よりも大切なのはデータですよね。たとえばテレビ広告をしたときに、その商品が本当に売れているかをデータを分析して確認できるようにするわけです。

この効果は、まずは楽天自体で証明していけると思っています。今はおそらく、実際に売れるものの5分の1ぐらいしか売ってないという感覚を持っているので、データを活用することによって、楽天のショッピング事業自体を飛躍的に伸ばしていけると思っています。

山田:データを内部で活用すれば楽天のショッピング事業が活性化し、外部で活用すれば日本の経済活動全体を活性化できるかもしれない。

三木谷:まさにそれ。経済学でいうところのデモンストレーション効果(他者に影響を受け購買行動が変化すること)を高めていくことができる。情報がちゃんと共有されていけば、購買も伸びてくるんです。そして、商品が売れればおカネの循環もよくなってくるということなので、個人消費の成長につながるんじゃないかな。

日本にはあまりにも多くの規制の壁がある

山田:データを活用した広告事業は、今後の10年における重要事業ですか。

三木谷:いや、ワンオブゼムです。AI(人工知能)を使ったさまざまなサービスの自動化であったり、オプティマイゼーション(最適化)というのはどんどん進んでいきます。もうあらゆるものが再定義されていく。たとえば教育というものも再定義されていくだろうというふうに思いますし、10年経てば、「なんで昔は学校が必要だったんだっけ?」という話になると思うんですよね。

山田:再定義を進めるうえでは、数多くの規制の壁がある。政府による規制改革が必須です。

三木谷:日本の今までの強さが、残念ながらこれからはマイナスに働く時代になる。つまり、日本はきわめて安定したシステムを作ってきたわけですが、これは変革期には非常に弱い。たとえば、ライドシェア(相乗り)は日本では、いまだに認められていないし、民泊についても本来であれば、さらに積極的に進めるべきだと思うんですけども、いまだに制限をかけようとしている。これは心配な動きです。

これからはブロックチェーンベースのプライベートカレンシー(私的通貨)も出てくるでしょう。そういうものについても、とにかく前向きに、積極的に進めていくという姿勢がないと広まっていかない。

まったく進んでいないとは言えませんけど、総じて言うと、やはり後手後手に回っている。既存の規制が壁になっているところがあるので、この規制をいかに撤廃していくか。本当に絶対必要というもの以外の規制については、見直していくべきだと思っていますし、それは楽天一企業じゃ難しいので、業界として力を集めて、新経済連盟としてやっているわけです。

山田:多くの政治家や官僚は、規制改革が必要であることはわかっている。しかし、「森友・加計問題」のようなことが起きると、岩盤規制の改革にはネガティブなイメージが付きまとって改革が停滞してしまう。これは日本の大きな不幸だと思います。

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