「JR北海道の路線維持」国はもっと関与すべき 自助努力や沿線による支援には限界がある

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だが、そういった指摘が行われるずっと前から、同社は鉄道のスピードアップなどで競争力強化を図る一方、関連事業などで経営の安定を図り、鉄道網を維持するための努力を行ってきたのも事実だ。

たとえば同社は、発足直後から特急列車の高速化に熱心に取り組んだ。需要の多い札幌―函館間には、最高速度130km/hでの運転が可能なキハ281系振り子式気動車を開発して1994年から投入。さらに、カーブが多い一方で速達化を求められていた札幌―釧路間には、さらに改良を施したキハ283系気動車を導入した(一部は函館方面へも投入)。これらの高速化により、高速バスや、飛行機から乗客を再び取り戻そうとした。車両だけではなく、石勝線や根室本線、宗谷本線では高速化に対応したインフラ改良を行った。

特急だけではない。地域輸送の改善にも力を入れた。輸送量の増加していた札沼線(学園都市線)の札幌(桑園)―北海道医療大学間の増発を行い、輸送量の多い千歳線には新車を導入したほか、新千歳空港連絡輸送の高頻度化も行った。

相次ぐトラブルで不信感

また、鉄道以外の収益源を確保すべく、札幌駅を大規模商業施設として開発。子会社の「札幌駅総合開発」が「JRタワースクエア」の管理を行い、不動産賃貸業の収益でJR北海道グループの赤字を埋め合わせようとしているほか、「JR北海道ホテルズ」は「JRタワーホテル日航札幌」などをはじめとするホテルの運営を行っている。さらに、発足当時は1万4000人程度いた社員を7000人程度に削減し、保線管理業務は外注化も行った。

これらの努力により、一時期まではなんとか運営を維持できていたといえる。

だが、2011年には特急「スーパーおおぞら」が脱線火災事故を起こし、さらに安全に関する不祥事も相次いで発覚。国土交通大臣から事業改善命令を受けることになった。事故は続き、レールの異常を放置したことを理由に国土交通省による特別保安監査も行われた。安全に関するJR北海道の責任は大きく、自治体などが抱く不信感の一因にもなっているといえるが、合理化という自助努力が、JR北海道を厳しい状況に追い込んだことは否定できない。JRだけの努力には限界がある。

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