「JR北海道の路線維持」国はもっと関与すべき 自助努力や沿線による支援には限界がある

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JR北海道は、単に鉄道に何らかの支援策を講じて運営を続ければいいとは考えていない。10月下旬に行われた第12回JR北海道再生推進会議の議事概要から言葉を借りれば、「現在の鉄道をそのままの形で運営しJR北海道に国の支援を入れて維持することは、決して地域にとって持続的でよりよい交通体系にはならず、JRと地域の皆様で共に役割を分担し、より良い線区を作り上げていきたい」というのがJR北海道の考えだ。

一方、JR北海道に「自助努力」を求めたと報じられた高橋知事は、基本的に鉄道網の維持について国による支援を求めるというスタンスだ。道も沿線自治体も財政は厳しく、長大な路線を自治体だけで支えるのは難しいからだ。

国が積極的な関与を

道や知事の姿勢には批判もあるが、知事は国に支援を求める行動を続けてきた。たとえば3月16日には与党幹部に抜本的な経営支援を求め、4月6日には自民党の「JR北海道対策プロジェクトチーム」の会合でも国の支援を要請。6月1日には石井啓一・国土交通大臣と面会し、公共交通機関としての路線を守るべく、対策を講じるように要望している。

だが、いままでのところ国の積極的な関与は見られない。

国鉄末期からJR初期にかけて、北海道では多くの路線が廃止された。その中には、羽幌線や天北線、名寄本線など長距離の路線もあった。そのころから北海道では地方の人口減少が進み、札幌への集中が加速していった。

過疎化が鉄道の廃線を後押ししたのか、鉄道の廃線が過疎化を後押ししたのか、どちらなのかは判断が難しい。だが、北海道という地域を維持するうえで、これ以上鉄道を廃止するわけにはいかないのではないかと思える。北海道の鉄道維持については、国レベルの政策課題として考え、国がより積極的に関与していく必要があるのではないだろうか。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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