目指すべき賃上げ率は定昇込みなら4%だ 日銀が掲げる物価目標2%と整合的なのは4%

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日本銀行は、消費者物価上昇率2%の「物価安定の目標」を2年程度で達成するために、2013年4月から異次元緩和を続けている。幸か不幸か今のところ目標は達成されていないが、日銀が2%の物価目標の旗を降ろす気配はない。一方で、足元の消費者物価上昇のほとんどはエネルギー価格の上昇によるものだが、日銀が重視している「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」の上昇率もプラス圏に浮上し、基調的な物価上昇圧力も徐々に高まりつつある。

筆者は「物価が持続的に下落する状況」という意味でのデフレはすでに脱したと判断しており、大きなショックがなければ消費者物価上昇率が再びマイナスになることはないとみている。円安、原油高が大きく進んだ場合には上昇率が2%に達することもありうるだろう。

2%の物価上昇ならベースアップは2%以上必要

実質賃金が増えなければ本格的な消費の回復は見込めないが、2%の物価目標が達成された場合、実質賃金の伸びがプラスになるためには2%以上のベースアップが必要となる。ベースアップがほとんどない時期が長かったため、継続的に物価以上に賃金が上がることを想像できない人が増えているかもしれないが、長期的に見ればベースアップは消費者物価上昇率を上回ることがほとんどであった。

ベースアップ2%を一般的に用いられる定期昇給込みの賃上げ率で表せば4%になる。これが冒頭で示した目指すべき賃上げ率の根拠だ。現実的には4%どころか安倍首相が要請した3%の賃上げを達成するのにも時間がかかるだろう。しかし、2%の物価目標と整合的な賃上げ率はあくまでも4%であり、3%が達成されたとしてもそれは通過点にすぎないことを認識しておくべきだろう。

斎藤 太郎 ニッセイ基礎研究所 経済調査部長

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さいとう たろう / Taro Saito

1992年京都大学教育学部卒、日本生命保険相互会社入社、96年からニッセイ基礎研究所、2019年より現職、専門は日本経済予測。日本経済研究センターが実施している「ESPフォーキャスト調査」では2020年を含め過去8回、予測的中率の高い優秀フォーキャスターに選ばれている。また、特に労働市場の分析には力を入れており、定評がある。

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