目指すべき賃上げ率は定昇込みなら4%だ 日銀が掲げる物価目標2%と整合的なのは4%

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そもそも、経営者に自ら進んで積極的な賃上げを行うことを期待することに無理があるかもしれない。経営者の重要な任務は自社の収益を最大化することであり、そのためにはなるべく賃金を上げずに働いてもらうほうが合理的だからだ。賃金を上げなければ労働者が辞めてしまい必要な雇用を確保できなくなる、労働組合からの賃上げ要求が厳しくなる、などといった状況になって、やむなく賃金を上げるというのが実態ではないか。

労働組合の賃上げ要求が低すぎる

賃上げを巡る環境は極めて良好だが、組合側の要求水準は上がっていない。連合の2018年春季生活闘争方針では、賃上げ要求水準が「2%程度を基準(定期昇給分を除く)」と前年と変わらなかった。連合は2014年に「定期昇給プラス物価上昇分等1%以上」と久しぶりにベースアップの要求を復活させ、2015年には「2%以上」と要求水準を引き上げたが、2016年に「2%程度」に引き下げた後、2年連続で据え置かれた。

また、連合傘下組合の実際の要求水準も2013年の2.11%から2014年が2.95%、2015年が3.75%と大幅に上昇したが、2016年(3.16%)、2017年(3.02%)と低下し、実際の賃上げ率も2年連続で低下した。組合からの要求水準が低いままでは実際の賃上げ率が大きく高まることは期待できないだろう。

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