「退職金で投資デビュー」は老後破綻への道 「長く働いた自分へのご褒美」は大間違い

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退職金を使って大きな買い物をしたり豪華な旅行に行ってしまったりということになりがちです。なにしろ長年頑張った自分に対するご褒美だと思っていますから、そういう使い方をすることにあまり抵抗感がなくなるのです。

しかしながら、実はちょっと豪華な旅行に行く、といったことは、一時的にすぎませんから、それほど大きな問題ではありません。

もっと怖いのは、退職金を「余裕資金」だと思ってしまうことです。どうしてそんなふうに感じるかというと、それまでは毎月給料が振り込まれていて、それで生活ができていたからです。そのうえにまとまったおカネが振り込まれると、余裕資金だと感じるのは無理のないことです。

退職金は余裕資金ではなく、大事な生活費を賄う資金

そこで「余裕資金なのだから株式や投資信託を買って増やすのがいい」と考える人が増えてきます。しかし、退職金は決して余裕資金ではありません。退職後の長い生活を賄うための大切な生活資金なのです。そんな大切な退職金をまとめていっぺんに株式投資や投資信託購入という大きなリスクにさらして、いいわけがありません。

ひょっとしたら、中には定年になるまでの間に退職金はいっさいアテにしなくても老後の生活資金を十分確保できているという人もいるかもしれません。そういう人であれば退職金を「余裕資金」と考えてもいいかもしれませんが、一般的にはそんなに余裕のある人は多くはいないはずです。だとすれば退職金の運用というのは慎重に考えるべきものです。

もちろん、退職者が投資をすること自体は、悪いとは思いません。特に退職者にとって、将来物価上昇が起こった場合に購買力を維持することは極めて重要なことですから、一定金額を投資するというのは合理性があります。

ただ、その場合でも、自分がリスクを許容できる金額の範囲内で行うべきです。

冒頭に書いたようにサラリーマンとして働いてコツコツ資産形成してきた人はそう簡単に老後破綻することはないでしょうが、退職金を“ご褒美”や“余裕資金”といった勘違いをし、間違った使い方をしてしまうと破綻リスクは大きく高まってしまいます。

特にこの5年ぐらいの間、アベノミクスによる株価の上昇で大きな収益を得た退職者の人もいると思いますが、株は決して永遠に上がり続けるわけではありません。自分の金融資産の大半をリスクにさらしておくというのは慎重に考えておくべきではないでしょうか。

大江 英樹 経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

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おおえ ひでき / Hideki Oe

大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。日本での導入第1号であるすかいらーくや、トヨタ自動車などの導入にあたりコンサルティングを担当。2003年から大手証券グループの確定拠出年金部長などを務める。独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるよう支援する」という信念のもと、経済やおカネの知識を伝える活動を行う。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『自分で年金をつくる最高の方法』(日本地域社会研究所)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などがある。

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