東芝巨額増資はゴールドマンの独り勝ちに

先を越された日系証券各社に衝撃

GSが国内勢を抑え込んだ最大の勝因は、グローバル・ネットワークを生かし、短期間で海外の買い手を引っ張ってきた「腕力」にある。総勢約30社、60のファンドを引受先にした第三者割当増資は「GSにしかできない」と競合他社の関係者も認める。銀行幹部も「引き受けには、日系証券では会うことさえできないようなメンバーも入っている」と驚きを隠さない。

もちろん、野村や日興、みずほ証券なども手をこまねいていたわけではない。関係者によると、東芝はもともと公募増資を希望していたが、債務超過のため、決算報告書には「継続事業としての疑義」が付いており、公募は不可能だった。銀行系証券は、大規模な希薄化を避ける策として優先株や劣後債の発行を提案したものの、定款変更のための臨時株主総会の開催が必要になるなどの理由で見送られたという。

別の提案では、株主が保有する株式数に応じて新株予約権を無償で割り当てるコミットメント型ライツ・イシューもあった。しかし、これまでに国内では1000億円を超える大規模なライツ・イシューは実施されていないうえ、資金調達が完了するには1カ月以上の期間が必要となる。東芝は、米原発に関する費用の債務保証を弁済するため、3月末より早い時期での資金調達を必要としていたため、このライツ・イシューは適さなかったとみられる。

「東芝が求めていたのは、『一刻も早く』という時間軸。優先株方式も、ライツ・イシューも時間がかかり過ぎだった」と主力行役員は解説する。

ファンドの姿勢は「純投資」

GSの後塵を拝した日本勢からは、増資後の東芝について厳しい見方も出ている。「物言う株主」への懸念だ。

引受先となった投資家には、エフィッシモ、エリオット、サード・ポイントなどアクティビストと呼ばれる海外大手ヘッジファンドが並ぶ。「普段は信託口などの裏側に隠れている投資家がこんな表舞台に出てきた。驚きの顔ぶれだ」(信託銀行幹部)という。

こうしたファンドは、通常、日本企業の資金調達に投資家として参加することはあまりない。日系証券の引受関係者は「アクティビストファンドは配分した後の動きに注意が必要。企業側に経営改善などを要求するリスクがあるため、公募増資などで配分しないからだ」と説明する。

東芝の今回の増資を各投資家とも「純投資」と位置付けているが、いずれ東芝メモリの売却などで、注文を付けてくるのではとの見方も浮上している。来年3月末の債務超過を回避し、上場廃止の危機からひとまず脱したかに見える東芝にとっては「一難去ってまた一難」となる可能性も否定できない。

(小澤美穂、取材協力:布施太郎 編集:北松克朗)

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