ゲーム会社が「アウトドア」に乗り出すワケ 非ゲーム事業に力を入れるアカツキの戦略

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理由の1つは、同社が「リアルエクスペリエンス」と呼ぶ体験型の非ゲーム事業の拡大に力を入れていることにある。同社は今期、ライブエクスペリエンス事業に10億円を投資するとしており、11月半ばには、サバイバルゲームフィールドなどを運営するアソビバと、パーティ運営やケータリングサービスを手がけるアプトを、約7億円投じて子会社化。両社を統合し、より総合的な体験型コンテンツを開発を目指すライブエンタテインメント事業を立ち上げる予定だ。

世の中の関心が、モノ消費からコト消費に移っていると言われて久しい。こうした中、香田氏は「あらゆる体験において、いかに感情に訴えられるか」が、コト消費、あるいは、コトにひも付いたモノ消費のカギを握ると見る。つまり、単に何かを体験するだけでなく、その体験が感情に響くほど特別でなければ意味がなく、そのためには、体験する場所や、一緒に体験する人、体験そのものの質が重要になってくるというわけだ。

そういう意味では、アウトドアレジャーは特別感が強いといえる。たとえば、あるSUP体験では、休憩中にガイド役が自ら焼いたパウンドケーキと紅茶が振る舞われるが、こうしたちょっとした「おまけ」が体験の質を上げる。これはアウトドアでしか得られない体験かもしれないが、そとあそびに参加するユーザーの反応や感想などをもとに、「何がユーザーの心に訴えるのか」を研究し、新たな体験型コンテンツ開発に生かすことは可能だろう。

リアルのノウハウはゲームにも生きる

もう1つの狙いは、体験型事業で培ったノウハウなどを、ゲーム事業に生かすことだ。前述の「感情に訴える」体験は、ゲーム開発でも重要になってきており、リアルとデジタルの境界が重なったコンテンツが増えていくことが見込まれている。今後はたとえば、あるゲームコンテンツを主軸に、それを体験できる施設や関連グッズを売る展示会の開催なども考えられる。

また、香田氏はアウトドアレジャーでは、一緒に体験する人たちにある種の「コミュニティ」が形成されることに注目する。確かにアウトドアレジャーでは、初心者同士がともにうまくなっていく過程を共有することで、知らない者同士がいつの間にか仲良くなっていることがある。こうしたコミュニティや共有体験は、ゲームにも共通するため、アウトドアのプラットフォームを、ゲーム事業のユーザー開拓にも生かせるのではないか、と見ている。

それでも、ゲームとアウトドアは対極にあるため、すぐに相乗効果を出すのは難しいかもしれない。重要なのは、アウトドア事業や、新たに設立するライブエンタテインメント事業で蓄積する顧客情報やノウハウを、ほかの事業で共有できるかどうか。企業規模にかかわらず、買収後に子会社と情報が共有できていなかったり、従業員が交わらなかったりする例は少なくない。それこそ、前述のようにリアルの場で、普段は交わることのない従業員たちが交流し、積極的に意見を交換したり、体験を共有できるような社内での仕掛けがカギを握るのではないだろうか。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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