習近平は鄧小平を否定し毛沢東に走っている 「中国の夢」に国際社会はどう向き合うのか
選挙によって為政者を選ぶという民主主義的な手続きのない中国の指導者は常に2つの「正統性」を確立することを強いられている。1つは共産党一党支配の正統性、もう1つは自分が最高権力者であることの正統性である。
抗日戦争や国民党との戦いに勝利した毛沢東は、その実績と共産主義というイデオロギーで2つの正統性を獲得した。鄧小平は、「改革開放路線」の実践で経済成長という果実を実現し、やはり正統性確保に成功した。
その後、中国社会は経済成長と国際化の波の中で大きく変貌した。経済成長によって富が分配され、社会階層が多様化し価値観も多様化した。さまざまな既得権も生まれた。情報化の進展で西側の政治制度などについての情報も入ってくる。必然的に人々が政治参加を求めるようになる。しかし、それに対応できる政治制度は中国にはない。そのため、人々の要求は時に共産党支配への批判につながっていく。
2つの正統性を得るのは困難で、強硬路線に
つまり、毛沢東や鄧小平の時代に比べると習近平の時代は2つの正統性を得ることが比較にならないほど困難になっているのだ。そこで習近平が打ち出したのは、共産党支配のさらなる徹底と、その上に君臨する自らへの権力と権威の集中、さらには民族ナショナリズムの強調という古典的手法だった。それを補強するため、今年に入ってからはネット規制の強化、体制批判を強めるジャーナリストや学者、文化人の弾圧強化を進めている。
自国中心主義に傾斜する米国のドナルド・トランプ大統領の向こうを張って中国は自由貿易や地球温暖化対策の重要性を強調しているが、「報告」を精読すると習近平は、かなりいびつで特殊な国家像を実現しようとしていることがわかる。日本をはじめ欧米主要国は、こうした中国とどう接していくのか、こちらもかなりの困難を伴いそうである。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら