汚染米騒動で露見したコメ流通の暗部、農水省にも批判集中
MA米を輸入代行する業者もうまみは少ないという。数年前に取り扱いをやめた商社は「輸入量が中途半端で儲けがない。麦を輸入する商社が農水省との付き合い上、輸入代行するケースがほとんど」と語る。倉庫業者も「荷動きの少ないMA米は儲けが薄い」とこぼす。「国際相場でコメを落札すると政府は言うが、輸入量の半分はアメリカ、と暗黙のうちに決まっている。MA米は100%が政治の産物」との声もある。
ミニマム・アクセスは国内コメ農家を保護するため受け入れた苦肉の策だが、当の農家からは「減反しているのに輸入するなど言語道断」と制度見直しを求める声もわき上がっている。農水省は加工用途に限定することで国産米の価格下落を防いでいると懐柔に必死だ。
主食用のコメでも偽装が横行の現実
「見かけは同じなのに価格が違う。だからコメは偽装の温床となっている」と卸売業者は口をそろえる。スーパーなどで販売される主食用の卸値は平均で1キログラム当たり240円。「中間流通で古米やMA米が混ざっても見分けがつかない」と大手コメ卸は話す。加工用米は平均で130~170円。その下のランクとして奇形ものなど「くず米」もあり、それらは50~80円。件のMA米は50~70円。それらを混入させれば、濡れ手に粟の儲けとなることは確実だ。
今回、事故米が混ぜられたのは加工用米だった。しかしある卸売業者は「ディスカウント店などで売られる激安な主食用米には、くず米やMA米が混ざったものもある」と指摘する。だとすれば、可能性は低くても、主食用に汚染米が混入する可能性すらゼロではない。川下に向かうにつれ、用途別に分かれたコメ流通の境界はあいまいになっているのが実情だ。流通問題は農水省も認識はしている。だが「04年に新食糧法が施行されて以降、コメは届出制となり原則自由化した」(農水省)と偽装防止などの規制にはほぼ関与できない立場をとる。
卸売業者は「農水省の優先順位は減反政策とMA米の処理。業者の不正を立ち入り検査で見抜くなど二の次なのだろう」と話す。消費者保護の仕組み作りに向け、官民挙げて一から議論を始める時期が来ているとは言えないだろうか。
(前田佳子 =週刊東洋経済)
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