しかし、メディアでいわれる「日本の借金」とは、個々の家計が抱える借金とはかなり異なるのが実情である。国民1人当たり数百万円の借金があるという言い方は、機械的に計算するとそういう数字が出てくるだけにすぎない。
これは、日本の財政状況の危機が深刻であるかのように政治的にアピールする方便の1つだと筆者は常々考えている。この事実を理解するには、政府・企業・家計という主体別にバランスシートを分けて考えたうえで、俗にいう「日本の借金」は、実は政府の負債であり、家計や企業から政府が借金しているという貸借関係を頭に入れる必要がある。
そうすると、「日本の財政状況は、家計が大規模な借金を抱えている状況」というイメージと実情がまったく異なることが理解できる。よく知られている話かもしれないが、政府部門では、2017年3月末時点で、借金である国債などが1052兆円の負債として計上されている。
政府は借金の一方、日本人は国債という資産を保有
だが、政府よりも大きなバランスシートを持つ金融機関と家計・企業によって、この1000兆円規模の国債(政府負債)の多くが「資産」として保有されている。つまり、政府は借金しているが、一方で日本人が「国債という資産」を保有していることになる。
実際に国債を大量に直接購入しているのは銀行、生命保険会社などの金融機関であり、約1000兆円の国債などを金融機関が資産側に保有している。
一方、家計・企業が国債を資産として保有している分は限られる。ここで、なぜ銀行や生命保険会社が国債を大量に保有するかを理解する前提として、金融機関と家計・企業のバランスシートの関係を理解する必要がある。
金融資産を蓄積している家計・企業の預金や保険料(将来の保険支払いに充当する)が、金融機関にとっての負債に相当するが、その見合いで金融機関は何らかの金融資産を保有しなければならない。その投資先が、1000兆円規模の安全資産である国債になっているわけである。
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