トランプ・アジア歴訪で喜んだ国、戸惑った国 アジアの指導者のうち少なくとも2人は満足

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「アジア諸国が求めていたのは、米国が少なくとも名目上、アジアに引き続きコミットしていることを明確に示すため、(トランプ氏が)ただ地域を訪れることだった」との見方を、マレーシア戦略国際問題研究所のシャリマン・ロックマン上席研究員は示した。

韓国の政府高官は、同国訪問の際にトランプ氏が予想外の行動や発言を行うことを心配していたが、大統領はかなり思慮深かったと話した。「韓国は米国とのパートナー関係において安心することができた」

アジア歴訪の最初の訪問国である日本でも大統領の評判は良かった。米大統領選で勝利を決めてまもなく、安倍晋三首相がトランプタワーを訪問し、高価なゴルフクラブをプレゼントするなど、当初からトランプ氏の機嫌をうかがっていた。

「最も重要な成果は、同一の戦略を共有しているというほぼ同じメッセージを、われわれは世界に向けて発信できるということだ」と日本のある政府当局者は語った。

豪華な歓迎

アジア諸国のリーダーにとって、トランプ大統領の思いつきによる言動や自由奔放なツイートや誇張に対応するのは大変だったに違いない。だが、彼らが学んだことの1つは、豪華な歓迎に対しトランプ大統領がよく反応するという点かもしれない。

「中国を訪問した人でこれほどの歓迎を受けた人はいない、と彼らは言うが、私もそう思う」。トランプ大統領は北京訪問後、記者団にこう語った。北京では習近平国家主席自ら、紫禁城を案内した。

アジア歴訪の成果をはかる1つの基準として、トランプ氏は歓待を挙げ、「恐らく誰もこれまで受けたことがないと思う」と述べた。

中国におけるトランプ大統領の友好的な態度は主に、習主席が北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長に対して一段と圧力をかけることを期待する米国の思惑に起因するものだと、外交官らは口をそろえる。

アジア歴訪中におけるトランプ氏の北朝鮮に関する発言は、外交的手段の活用から軍事介入の警告までと幅広い。「われわれを見くびるな。われわれを試そうとするな」と、同氏は韓国国会で行った演説で北朝鮮に呼びかけた。

数日後、北朝鮮はこの演説を「老いぼれによる向こう見ずな発言」と一蹴。これに対し、トランプ氏は「なぜ金正恩氏は私のことを『老いぼれ』と呼んで侮辱するのか。私は一度も彼のことを『チビでデブ』と呼んだことがないのに」とツイートした。さらには外交による解決の兆しを見せ、「まあともかく、私は彼の友人になろうと、とても努力している。いつかそうなるかも!」と記している。

トランプ大統領は北朝鮮戦略をもたずにアジアを訪問し帰国したと、オバマ政権で米国連大使を務めたデービッド・プレスマン氏は言う。

「チビデブ発言は核戦略ではない」と同氏は指摘。北朝鮮に対する米国政府のアプローチは「気まぐれで無知な大統領の思いつきとエゴ、そして芝居じみた打算が源となっている」と付け加えた。

(John Chalmers and Steve Holland 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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