ブリヂストン、自転車競技でも疾走できるか 東京五輪への車両共同開発決定の舞台裏

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ブリヂストンが今回の合意に迷った背景には日本代表の不振もありそうだ。自転車競技は、2012年のロンドン、2016年のリオとも日本代表はメダルゼロ。

2014年には総監督の解任騒動も起きており、数年前までは組織が揺れていた。日本発祥の競技であるケイリンですら北京での銅を最後にメダルは遠くなっている。

競輪界のレジェンドが復活

ブリヂストンサイクルが1964年から運営する自転車競技チーム。1999年からは「アンカー」として活動している(写真:ブリヂストンサイクル)

ただ、復活の兆しもある。1977年から1986年にかけて世界選手権10連覇を達成した”レジェンド”中野浩一氏が、2016年末に選手強化委員長に復帰。

中国に自転車競技で初の金メダルをもたらしたフランス人指導者のブノワ・ベトゥ氏も同時期に短距離ヘッドコーチに就任し、ムードは大きく変わってきているようだ。

実は中野氏は、ブリヂストン創業の地である福岡県の久留米出身で、「小さいときから自転車といえばブリヂストン。近くに(創業家の)石橋さんゆかりのものがたくさんあり、ブリヂストンとともに育ってきたという思いもある」と話す。

中野氏は国産への思いも強かった。「実際、僕のときはオール国産でやっていた。外国人が『ナカノ、何に乗ってるんだ?』と見に来て、それを買いに行っていた時代があった」。それが今では、彼らのほうが前に行ってしまったという悔しさがあった。

「だったら、この東京五輪はもう一回、日本の技術を世界に見せつけるいいきっかけになるんじゃないか。それにはブリヂストンの自転車でメダルを取るのが一番」(中野氏)という思いが、今回、ブリヂストンに通じたようだ。

熱意を受け止めたブリヂストンの本業は堅調だ。11月9日に発表した2017年1~9月期(第3四半期)決算は原料高の影響で営業減益となり、通期の業績見通しも、欧州などで値上げの浸透に時間がかかっていることから引き下げた。ただ、売上高営業利益率は11%を超え、最終益は増益を守る。

大口径の鉱山用やSUV(スポーツ多目的車)用タイヤ、パンクに強いランフラットタイヤなど高付加価値タイヤも順調に売り上げを伸ばしており、電気自動車時代になってもその地位が揺るがないと見られている。

積極的な株主還元姿勢も含め、株式市場の評価は高く、10月に上場来高値を更新。11月の下方修正を受け、株価も調整したが時価総額は4兆円前後を維持する。ネットキャッシュも6000億円以上に積み上がり、体力十分のブリヂストンが自転車でもブランド向上に本気を出し、連盟の選手の育成も順調に進めば、メダル獲得は夢ではないのかもしれない。

山内 哲夫 東洋経済 記者

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やまうち てつお / Tetsuo Yamauchi

SI、クラウドサービスなどの業界を担当。

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