ブリヂストン、自転車競技でも疾走できるか 東京五輪への車両共同開発決定の舞台裏
時間がかかった理由を西山会長は「当社が持つ技術を組み合わせ、最終的にプロダクトに反映させ、それが選手にマッチするかどうか。当然これは一存じゃダメ。企業なので、きちんとした責任部署などと連携することが必要だった」と説明する。
また、「技術レベルがどこまで期待されているかわからないので、並行して現場とも少し話す必要があった」(西山会長)。
チームも運営するブリヂストンの自転車事業
ブリヂストンの自転車事業を担うブリヂストンサイクルの主力商品は、いわゆるママチャリ。チェーンの代わりにカーボンベルトを使った「アルベルト」は2000年の販売開始以来、累計120万台以上を売る有力商品だ。
2015年には独自開発した両輪駆動の電動アシスト自転車を発売。それまで同社の電動アシスト自転車はヤマハ発動機の電動アシストユニットを搭載していたが、自社開発ユニットの搭載も開始している。
ただ、国内のみで事業を展開しているため売上高468億円、営業利益12億円と、3.3兆円の売上を誇るグループ内では小さめの事業だ。
さらにこうした分野は、中国製の低価格の自転車に侵食されているのが実情。そのためブリヂストンサイクルは最も付加価値の高い競技用自転車の開発にも挑戦し続けている。
五輪代表にも1972年以来、自転車の提供を続けており、その中核ブランドが1998年に誕生した「アンカー」。米トレックや台湾のジャイアントと並ぶ国内スポーツサイクル市場のトップブランドだ。
2016年にはフレームの推進力を最大化する独自の解析技術「PROFORMAT」を投入し、日本人に最も合うフレーム作りを追求している。この11月にはプロ選手が使う「RL9」より低価格の「RL8」などの新モデルを投入。スポーツサイクル分野への強化を進めている。
そのブリヂストンサイクルが1964年から運営する自転車競技チームが、同社のブランドを冠した「ブリヂストン アンカー サイクリングチーム」。1999年からアンカーを名乗り、現在はUCI(国際自転車競技連合)の3段階目のカテゴリーに所属する。
国内9チームがここに所属するが、有名なツール・ド・フランスなどの3大レースへの出場は最上位のカテゴリーにいる18チームを中心とした22チームに限られ、国内勢は参加できない。
このため、選手は上位チームへの移籍を目指すケースも多い。ツール・ド・フランスで敢闘賞を獲得した選手がかつてアンカーに所属したケースもあり、それだけ、アンカーなどが選手を育てる基盤としての役割を果たしてきたともいえる。
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