田園都市線「地下区間」トラブル続発の理由 開業から40年、進む施設の老朽化

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ただ、田園都市線は首都圏でもトップクラスの混雑率を記録する路線。最混雑区間は池尻大橋―渋谷間で、ピーク時には複線区間では限界に近い1時間あたり27本の列車が走る。2000年代半ばに比べればやや減少しているものの、列車本数も利用者数も開業時と比べれば大幅に増えている。

東急の「安全報告書2017」によると、2016年8月に桜新町駅で起きた信号関係の機器故障は「内部配線が長期間にわたる振動等によって、疲労破壊し、断線したため」とされている。混雑率180%を超える列車が1時間に30本近く走ることによる振動などが、想定よりも設備の老朽化に影響を与えている可能性もありそうだ。

この点について森氏は「定量的に証明はできないが、列車ダイヤや利用者も増えているので、その要因はあり得ると思う」と語る。

点検や更新の頻度を見直しへ

現在、東急ではき電ケーブルの検査を目視で2カ月に1回、機器を使ってケーブルの絶縁を確認する精密検査は5年に1回実施。信号関係のケーブルについては目視による点検を6カ月に1回、精密検査を2年に1回行っているという。

この検査周期は地上区間も地下区間も同様だが、同社鉄道事業本部電気部の伊藤篤志統括部長は「地下も地上部分と(検査周期などを)一緒に考えていいのかという点や、田園都市線の地下区間特有のものがあるのではないかという点も見直しは必要と考えている」といい、設備の点検や更新の頻度を短くし、点検方法の見直しも図るという。

田園都市線といえば、首都圏を走る鉄道各線の中でも特に「ブランド力」の高いとされる路線。同線は、起点である渋谷はもちろん、二子玉川やたまプラーザなど東急グループが不動産・商業施設などの開発に力を入れるエリアの主軸となる路線だ。

一方で、今回のような大規模なトラブルに限らず、遅延の多さや混雑の激しさなど、利用者からは不満の声も多い。今回の停電でも、利用者からは「また田園都市線か」との声が多く聞かれた。グループの基盤である鉄道の安定運行や安全性が揺らいでいないか、本格的な総点検が必要だ。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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