時短正社員の多くが口にする「ここで辞めたら二度と同じ条件で就職できない」や、また時短勤務者が時短制度終了直後に辞職するケースが多いのも、この「法律上の賃金設定と、時短勤務者の実質的な生産性の乖離」で説明がつく。
「周囲の支援」=「周囲からの搾取」
女性活用の美名の下で、「子持ち女性を甘やかせば甘やかすほど名管理職」という風潮が散見される。「画期的な時短プログラム」を導入した管理職は、しばしばマスコミでもてはやされるが、同時に「時短正社員が帰宅後の仕事を誰が担当するか」については、典型的な日本型組織では「思いやり」「助け合い」といった美しいが中身のない精神論で片づけられることが多く、結局のところ現場の下っ端のサービス残業でカバーすることがほとんどである。
昭和時代にも産休を取る女性正社員は存在したが、その割合は現在に比べればはるかに少なかった。周囲の支援(=周囲からの搾取)といっても、「支える人の数>>支えられる人の数」であったため、搾取される側も「まあ我慢できる」範囲内であり、問題が表面化することはまれだった。昭和時代には、年金システムが大きな問題もなく回っていたのと同様である。
平成20年代の典型的日本型組織は、上部には定年延長で余剰中高年を抱え、また下部組織は非正規職員に置換され、かつてのような整然としたピラミッド型組織ではなくなっている。そこへ、女子正社員の増加→産育休時短社員の増加が加わり、部門によっては「支える人の数<支えられる人の数」のことも散見されるようになった(図4)。
運が悪いと「1人で3人ぐらいのローパフォーマーの穴埋め」を要求されることもあり、(私も経験があるが)「1人で複数ローパフォーマーの穴埋め」という状況は肉体的にも精神的にもかなりツラい。しかし、そのことを管理職に訴えようものならば「幼い子をもつ女性をたたくなんて卑怯だ!」「大きな心を持て」などと、逆に説教されて終了となり、ますます徒労感が増すだけに終わる場合が多い。
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