五輪日本チームに学ぶ「プレゼンの王道」
グローバル基準のプレゼンとは何か

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最高の演技

プレゼンの中身を具体的に見ていこう。

「皇室がこのように話をするのは初めてです。皆さんも驚かれているかもしれませんが、私も驚いています」。高円宮妃久子様はこんな導入で、いかにこのプレゼンに価値があるか、特別なものであるか、という期待感を醸成した。

続いて登場した佐藤真海選手は自らのつらい体験を乗り越えた「自分」を演じ切った。スポーツの力で挫折と絶望を乗り越える、まさに「ヒロイン」の役回りだ。

つねに安定感を持ってチームを引っ張る厳粛な「リーダー役」を果たした竹田恒和・招致委理事長。論理的に、東京の強み、オリンピックファミリーに与える恩恵を力強く語る一方で、水野正人・招致委副理事長はユーモラスな表情とジェスチャーで、幾分コミカルに、「道化」的に場を和ませた。猪瀬直樹東京都知事はこれまでのプレゼンより、若干ジェスチャーは抑え目に、ロジカルに東京のインフラ、財政的強みをアピールする「案内役」に徹した。

舞台中盤、聴衆の集中力も切れかかる頃、目の覚めるような笑顔で登壇した滝川クリステル氏。「女神」のような雰囲気と魅惑的なジェスチャーで、東京の魅力を語った。それはIOC委員に、「東京に行けば、こんな美女が、“おもてなし”してくれるのか?」という幻想を抱かせんばかりだった

例えば、むくつけき男性陣が「お・も・て・な・し」というアピールをしても、きっと何の効果もなかったことだろう。手を合わせて挨拶する姿は、日本では不自然だが、海外の男性から見れば、しとやかなアジアンビューティーのイメージそのもの。そんな「あざとさ」も国際舞台では効果を発揮した。

太田雄貴選手はフェンシングよろしく、甲冑をかぶった騎士のようなを想像させる「ヒーロー」を力強い表情とジェスチャーで、りりしく演じ切った。そして、満を持しての登場となった安倍首相は、威厳ある「時の権力者」として、「(汚染水問題は)アンダーコントロール(統制されている)」と高々と“宣言”し、「ヤマ場」を制した。

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