北と軍事衝突、前CIA長官が示した懸念の重み 「20~25%の確率」日本に火の粉及ぶ最悪説も

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北朝鮮がすでに核兵器を保有し、それが日本や韓国にとって重大な脅威となっている現実を踏まえ、強気一辺倒ではない、現実的な対話へと踏み切るべきだ、という考えをタウン氏は示唆しているように見えた。

安倍晋三首相は、衆院選で「北朝鮮には、圧力をかけていかないといけない」と繰り返し訴え、勝利した。そして安倍政権は、「軍事的オプションを含めたすべての選択肢をテーブルの上に置いている」というトランプ政権の姿勢を、強く支持し、歓迎する意向を示し続けると共に、北朝鮮に対する強い態度をとりつづける必要性を強調している。

一方で、日本政府からは、圧力をかけ続けていった先に何があるのか、最悪の場合何が起こるのか、といった想定は示されていない。「38ノース」の被害想定は過大だ、という批判はあるだろう。しかし、だとすれば、北朝鮮からのミサイルを日本はどの程度の確率で打ち落とせるのか、その場合の被害想定はどの程度になるのか、という現実的な説明が必要になるのではないか。そうしたリアルで冷徹な議論は日本ではほとんど行われていない。

こうしたなかでトランプ大統領が11月5日からの訪日を皮切りに、韓国、中国などアジアの計5カ国を歴訪する。安倍首相、韓国の文在寅大統領、中国の習近平国家主席との首脳会談では、北朝鮮問題が、最重要のテーマになるだろう。

トランプ氏のアジア歴訪は北朝鮮問題を議論できる機会

トランプ政権に近い関係者から私は、「トランプ大統領と安倍首相は本当にウマが合う。いまトランプ氏は安倍氏に何度もかけている電話で、いろいろなアドバイスを求めている」と聞いている。ホワイトハウスの高官たちでさえ、トランプ大統領の「制御」に苦労するなかにあって、安倍首相や習主席は、トランプ大統領とじっくり話し合える間柄にある。

アジア歴訪では「日米同盟は地域の安定の礎石であり、北朝鮮へは一致して強い態度で臨む」「米韓同盟は強固だ」といったメッセージが発せられるだろう。表ではそうした立場を表明するのは当然だが、その裏側で、トランプ大統領と安倍首相、文大統領、習主席が、どれだけ深く北朝鮮問題を議論できるかが本当のカギを握っている。

米朝の軍事衝突が、日本や韓国、そして米軍にどのような甚大な被害をもたらすおそれがあるのか、そして米国、日本、韓国、中国は、北朝鮮危機を今後具体的にどう終息させていくのか。今回の12日間に及ぶ異例の長さのトランプ氏のアジア歴訪を、トランプ氏に事態の重大さを理解してもらい、水面下で深い議論を行う場にできるかどうかが、今後の北東アジアの運命を左右することになるはずだ。

尾形 聡彦 朝日新聞オピニオン編集部次長兼機動特派員

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おがた としひこ / Toshihiko Ogata

1993年朝日新聞入社。秋田、千葉支局を経て、経済部記者として財務省、鉄鋼業界、証券業界、流通業界などを担当。2000~2001年に米スタンフォード大学客員研究員。2002~2005年に米サンノゼ特派員としてシリコンバレーを取材した。2008~2009年にロンドン特派員として欧州経済、2009~2012年はワシントン特派員としてホワイトハウスや米財務省、米連邦準備制度理事会(FRB)を取材。日本の財務省・政策キャップ、経済部次長、国際報道部次長を経て、2015年から機動特派員として、米ホワイトハウスや日本政府を取材している。2016年からはオピニオン編集部次長を兼務する。7月下旬に、2つの米政権や大統領弾劾の行方を描いた『乱流のホワイトハウス トランプvs.オバマ』(岩波書店)を刊行した。ツイッターは@ToshihikoOgata

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