菅義偉官房長官もそうでしたが、記者会見でもワンフレーズで「それ以上でもそれ以下でもありません」と突き放し、それが通っていました。政権の支持率が急落してから、彼らのこの態度は表面上は急変し、「丁寧に説明します」という言葉だけでも聞けるようになったのです。
私は長期政権が悪いとか、安倍さんがどうこう言っているのではありません。せめてもう少し強い野党があれば、伝統的に強い自民党でも、もっと緊張感をもって政治をしてもらえたのにと思うと、残念でならないのです。選挙中の低姿勢が、選挙後に豹変するのは、大半の権力者に共通するパターンなのですから。
「過去は変えられないが、未来は変えられる」
現ノルウェー王の妃であられるメッテ=マリット妃は、父親が麻薬の常習犯で、ご自身も麻薬をやり、子連れだったため、当時のノルウェー皇太子との結婚は国王夫妻はじめ、全国民からも猛反対されたそうです。そのとき彼女は真摯に過去を悔い反省され、この言葉を心から全国民に訴えられたとか。ノルウェーの人々も見事だったと思いますが、この言葉に国民は感動し、彼女を皇太子妃として受け入れ、今では敬愛される存在で、妃もそれにふさわしい活動をされていると聞きました。
今回の選挙では、このビッグ野党をつくる絶好の機会をみすみす壊したような人が選ばれたり、希望の党の迷走がなければ当然選ばれたであろう有能な人が落選したりしました。
しかし過去は変えられないが、未来は変えられます。私たちに今できることは、せめて、政治家を温かく厳しい目で見る力を、まず平素より培うことが肝心だと思いました。その第一歩は、現地点での勝利宣言や敗戦の弁が参考になるのではないでしょうか。
希望の党の「チャーターメンバー」で、小池さんの地盤を引き継いだ彼女の右腕・若狭勝さんは、敗因を「野党が割れたから」と言いました。正しくは「野党を割って、与党を利した張本人は私たちです。それも小池さんの人気頼みだけで、驕り高ぶり、人選も滅茶苦茶だった」と語るべきではないでしょうか。
最後まで南スーダンの自衛隊の日報問題などでしらばっくれ、手柄でも立てて辞めるかのような辞任劇を演じた稲田朋美さんは、選挙中も「福井のおっかさんで~す」「福井のメガネとパンツを使っていま~す」しか聞こえてこない人でした。当選会見のあの割れるような笑顔には緊張の欠片(かけら)もなく、彼女はなぜ辞任したのか、当人さえわかっていないのではないかと思われる程です。反省のない人に未来はあるでしょうか。
そんな中、67の選挙区で候補を取り下げ、野党共闘を実現させた政党もありました。共産党は議席を減らしたのに、野党共闘が成功したのは、自分たちの喜びでもあると語った志位和夫委員長には、その政治的スタンスや政策の是非は別として、誠実な人間性を感じました。
勝った人は勝ってカブトの緒を締めていただき、負けた人で本当に志のある人は、捲土重来(けんどちょうらい)を期していただきたいものです。私は右も左もわからない単なる政治オンチですが、選挙結果直後の新聞やテレビ画面を見て、このように感じました。政治家でなくとも、過去は変えられなくても、胸を張れる未来にしていく日々の努力こそが肝心だという教訓と受け止めました。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら