猛暑が思わぬ追い風、ネットスーパーに光 顧客基盤の拡大とともに採算も改善基調に

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悪天候日に注文集中

スーパーの既存顧客は生鮮食品をはじめとして店舗で実際に商品を見て買うことを好む。ネットスーパーの注文数がハネ上がるのは、猛暑、台風など店舗へ行くのが難しい天候のときが多い。

配送拠点となる各店舗は、ネットスーパーのために、注文された品の収集や梱包をする人員、個人宅へ配送するためのトラックなどを事前に確保しておく必要がある。体制を悪天候の注文ピーク時に合わせれば、平時の稼働率が低下し収益を圧迫する。逆に平時に合わせれば、悪天候時に注文を断る事態も起こりかねず、信用低下による先々の注文数の減少を招くおそれがある。

今夏に関しては、「夏前から店舗によって作業場を拡大したり、人員面でも応援体制を強化し、大半の店舗で1日300~400件、最大で500件程度の注文をこなせる体制にしていた」(ヨーカ堂)、「人員配置など店舗の作業効率を高めた」(イオンリテール)など、事業拡大を狙う施策によって注文を断るケースは最小限に抑えられた。

だが、せっかく体制を強化しているにもかかわらず、秋以降は天候が安定し注文数が伸び悩めば、採算は大きく悪化しかねない。「黒字化のメドは立った」(イオンリテール)、「今後は商品数を拡大させ充実化を図っていく」(ダイエー)と、各社とも事業拡大に前向きだが、今後の成長には、さらなる能力拡大や稼働率向上が前提となる。

それには顧客数や注文数の安定的拡大が不可欠であり、都市部に比べ遅れている地方での展開やシニア層の開拓など新規顧客層の拡大も必要だ。何より今夏に向上したネットスーパーの認知度を、いかに今後の売上高につなげていけるかが、大きなカギになる。

週刊東洋経済2013年9月14日号

石川 正樹 東洋経済 記者

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いしかわ まさき / Masaki Ishikawa

『会社四季報』元編集長。2023年より週刊東洋経済編集部。

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