元テスラ幹部が予言する「日本車」の未来 EVシフトで泣く会社・笑う会社はどこか?

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――EVの航続距離を決める大きな要因が車載電池です。電池の進化による航続距離の長距離化はどこまで進むと考えていますか。

テスラ車底面には約7000本の電池が並ぶ(記者撮影)

現行のEVはすでに500キロメートルくらいまでは走れる。ただ、これ以上必要かどうかは疑問。日常生活でそれ以上走ることはまれだからだ。それなら最終価格をより安くできるような開発をしたほうがいい。

そもそも、EV化で車のライフサイクルは長くなる。いまガソリン車は累計15万マイル(約24万キロメートル)ぐらいで寿命を迎えるが、EVだと将来的には50万マイル(約80万キロメートル)くらいは走れるようになる。電池やモーターがもつからだ。そうなれば、購入価格は高くても使用期間全体のコストで考えればEVのほうが安くなる。そのほうが重要だ。

当面は従来型のリチウムイオン電池が優位か

――次世代電池の全固体電池はいつ実用化されると思いますか。

トヨタ自動車が全固体電池を開発していることが話題になっているが、実用化はまだまだだと思う。今後10年間で実現するかどうかも疑問だ。電池の寿命やエネルギー密度、生産コストなどさまざまな問題がある。

今後5〜10年間は従来型のリチウムイオン電池の性能が改善し続けるため、全固体電池が性能と製造コストにおいて追い抜くことは難しいだろう。加えて、リチウム金属電池のようなほかの技術が全固体電池の前におそらく商品化されるはずだ。電池の性能やコストには改善の余地があるうえ、市場は急拡大している。車載電池事業に参入するにはエキサイティングな時期だ。

――次世代車として、燃料電池車に取り組むメーカーもあります。

トヨタとホンダが燃料電池になぜ取り組んでいるのか理解できない。EVと比べエネルギー効率も環境に対してもよくない。EVにはおそらく十分に力を入れていないのだろう。トヨタとホンダはハイブリッド車(HV)に力を入れてきた分、HVをもっと売りたいというのであればわかるが。

日産が刷新したEV「リーフ」。フル充電での航続距離は従来比4割増の400kmに伸びた。(撮影:大澤 誠)

――一方で、日産自動車はEVメーカーとしては先駆けです。日産をどう評価しますか。

カルロス・ゴーン会長の考え方はすばらしい。ビジョンを持っている。(日産のEVが)思ったより売れていない理由はいろいろあると思うが、新型の「リーフ」は航続距離も長くなり、改善されつつあるのは間違いない。もっと売れると期待している。

――テスラが高級車で成功したのに対し、日産はどちらかというと大衆向けにEVを売ろうとして苦戦している印象があります。

先ほど話したように、車が50万マイル走れるようになれば、そんなに安いEVを開発する必要はない。日産はいつもマーケティングがちょっとずれているのではないかと思う。もっと長くもつ車を造ることに力を入れたほうがいいのではないか。

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