東急池上線無料デーで露呈した「沿線内格差」 大盛況「戸越銀座」と対照的に閑古鳥の駅も

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東急電鉄によれば、この日配布されたフリー乗車券は21万枚。1日の輸送人員の延べ人数約23万人に対して一見少ないように見えるが、フリー乗車券の客は何度も乗り降りするため、実際の輸送人員は倍以上あったはずだ。東急電鉄も「想定を上回った。多くの方にいらしていただき、イベントは成功した」と手応えを感じていた。

また、フリー乗車デーという奇抜なイベントだったため、マスメディアの取材が多く、テレビやインターネットを通じて多くの人々に拡散する結果となった。これは東急電鉄の狙いである「知ってもらう」ことに大いに効果をもたらしたといえよう。

戸越銀座は多くの人でごった返した(筆者撮影)

これまで池上線はあまり認知度の高くない路線で、20代から40代を対象にしたあるアンケートでは田園都市線や東横線に比べて知名度が20%も低かった。今回のイベントは「選ばれる沿線づくり」を進める東急がこうした数字に危機感を覚えたため行ったという側面もある。

実際、沿線に住む人は「普段、自分の住まいの場所を紹介するときに、説明しづらくて困っていた。でもこのイベントのおかげで『池上線沿線』といえば『ああ、あのイベントのあった池上線か』とわかってくれるようになりそうでうれしい」と言う。

また、千葉県から池上線にやってきた人は「これまで池上線にあえて行こうと思うきっかけがなかった。今回はイベントをやるということで雰囲気に誘われてやってきた。沿線は落ち着いているし、駅前商店街にアクセスしやすいと感じた」と池上線の魅力を感じたようだった。

今回のイベントは実験的な側面もありながら、広報的な意味では非常にいい結果になったといえよう。

沿線活性化への課題が見えた

さて、「池上線」の知名度は上がった。しかし、気になる点が2つある。

1つは来訪者の「沿線内格差」が見られた点だ。フリー乗車デー当日、アプリで各駅の混雑状況を逐次チェックしていたが、特定の駅に人が集中する傾向が見られた。中でも集中傾向が強かったのは、戸越銀座・洗足池・池上の3駅で普段の3倍程度、続いて石川台・雪が谷大塚・御嶽山で普段の2倍程度だった。そのほかの駅は普段と同じか1.5倍程度の駅も多く、"沿線内格差"が発生していた。

人通りの少なかった荏原中延駅近くの「中延商店街」(筆者撮影)

東急電鉄ではフリー乗車デーに先駆け、「生活名所」と題した池上線の魅力を発信するプロジェクトを行っていた。しかし、そこで取り上げられている場所の多少は関係なく、フリー乗車デーで混雑していたのはテレビでよく取り上げられる場所や、比較的「わかりやすい」場所だった。

特に荏原中延では、沿線スタンプラリーのために駅ビルの東急ストアに並ぶ人が目立つ程度で、乗降客数も普段の1.5倍程度だった。地域の個人経営の商店も多く、今回のイベントには意気込みを見せていたのとは裏腹に、商店街まで向かう人が少なかった。また、石川台でも駅から少し離れた商店街で「祭り」を行っていたものの、訪れる人はあまり見られなかった。

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