銀行カードローンの異常な膨張に募る危機感

個人融資に傾注する銀行、監視強める金融庁

銀行のカードローン残高は前述のように5兆6793億円だが、貸金業者の貸付残高は2兆6540億円(同年3月末時点)。いまや消費者金融の貸付残高は、銀行の半分以下に減少した。個人の借り入れ需要が消費者金融業者から銀行に大きくシフトした、といってもいいのかもしれない。

ところで、金融庁の金融レポートでは、銀行の問題点としてカードローンと同時に「アパートローン残高」の問題点も併記されると報道されている。全銀協では、カードローンと同時にアパートローンの残高も毎月公表することになっている。

相続税の基礎控除額引き下げなど、不動産市場活性化を積極的に推進してきたアベノミクスの影響で、近年アパートローン残高は急増。人口減少著しい地方都市でも、アパート建設が活発に行われており、将来的な空室率上昇、返済負担の増加は避けられないかもしれない。日銀によると、2016年9月末現在のアパートローン残高は22兆円。前年同期で4%の伸びだ。

カードローンやアパートローンが収入源になった理由

銀行にとって、カードローンやアパートローンが貴重な収入源になってしまった背景には、いうまでもなく「アベノミクス」がある。銀行の貴重な収入源だった「国債」の利ザヤが縮小し、企業への融資も潤沢な内部留保を背景に振るわない。

たとえば、2017年3月期決算では、銀行の「実質業務純益」は都市銀行で前期比マイナス13.2%となった。実質業務純益とは、本業の収入から国債等の債券損益などを差し引いた額で、銀行の本業で得た利益を厳密に表したもの。マイナス金利導入によって、利ザヤの縮小が影響して1割以上もの減収になったわけだ。

これが全国に64行ある地方銀行になるともっと深刻になる。実質業務純益は前期比マイナス19.8%、第二地方銀行でも同16.0%のマイナスとなった。国債運用による収益が減少し、カードローンやアパートローンによる収益にも厳しい審査が入れば、残るは法人融資などになるが、内部留保をたっぷり抱える法人は借金などしたがらない。

アベノミクスの推進によって、銀行は個人向け消費者ローン事業やアパートなどの不動産ローン融資に注力するしか、利益を出していく方法がなくなってしまったわけだ。

一方、カードローン破綻者が増えれば、銀行の経営を圧迫することになるし、金融庁が指摘するようにアパートローン融資に対しても不安があれば、地方銀行や第二地方銀行の中には、経営危機を迎えるところがあるかもしれない。

銀行にとって苦しいところかもしれないが、アパートローン、カードローンのこれ以上の膨張は、後々日本経済に悪影響を及ぼす懸念がある。これまで個人向けローンといえば消費者金融会社が主流だったわけだが、その座はいつのまにか銀行に明け渡された。かつて、「サラ金地獄」と呼ばれた多重債務問題が、今度は「銀行ローン地獄」になる可能性が出てきている。金融庁と銀行による自浄努力の徹底が求められている。

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