残念な上司は部下の報告をうまく生かせない ムダな営業日報にこだわりすぎていませんか

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私は報告の場においては、「性善説」をとるのがいいと考えています。正しい情報や真実を語れば、多くの場合、それが悪い内容であったとしても、それに対する解決策をメンバー自身が考えるようになる。アドバイスは必要以上にはしないほうがいいこともあります。

たとえ悪い内容であっても、メンバーが事実を正確に報告できる環境は、マネジャーの「聞き方」によってつくられるのです。

「日報」にかけた労力は報われているのか

一方、営業部門における「ホウレンソウ」の代表格である「営業日報」は本当に必要でしょうか。デイリーの報告業務に意味がないとは思いませんが、日報という形式そのものが、時間がかかってしまうものであることは否めません。

「営業日報からビジネスチャンスを見いだす」という方法論もよく聞かれます。現場で起きた些細な出来事や、担当営業マンにとっては何ということもない情報を日報で共有する。そして、経験豊富なマネジャーがそこから「売り上げのヒント」を拾い上げ、チャンスにするという考え方です。確かに一理あるとは思います。しかし、そこまで詳細な報告を日報に書き込むのは、大変な作業量です。

外回りから帰ってきて、すぐにパソコンに向かってその日の日報を書く。きちんとやれば1時間はかかる作業でしょう。「ビジネスチャンスを見いだす」という視点であれば、マネジャーが読むのにも30分はかかるかもしれません。その時間に、ムダはないでしょうか。日報を書くことそのものが、あるいは読むこと自体が、「目的」にすり替わってはいないでしょうか。ウイークリーの報告で十分なケースも多いのではないでしょうか。

ホウレンソウの本質は、事実を事実として、ありのままにメンバーとマネジャーが共有することにあります。しかし、それは「ゴール」ではありません。それによって生産性を高め、業績を上げてこそ、仕事なのです。

メンバーの限りある時間を奪ってはいけない

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メンバーは、マネジャーの指示によって仕事の時間を費やします。形式にとらわれて、ムダな作業時間をメンバーに課すことは、マネジャーの能力不足の証しです。多くの人が会社で働く約40年間は、人生100年時代の最も大切な時期。この大切な時間を企業に預けているともいえます。そんなメンバーの時間をムダに費やさせたということは、「その人の時間(命の一部)を奪っている」と言っても過言ではありません。

日々のルーチンワークの中で、正確に速くやることが大切な仕事は、もちろんたくさんあります。しかし、マネジャーはできるだけそうした作業の時間を短縮し、「新たな着想や発想を使って果敢な挑戦をすること」にメンバーの能力を活かすことが何より重要です。

だからこそマネジャーは、たとえば「ホウレンソウは、この場面で本当に必要か?」という問いかけを、つねに行ってほしいのです。1人ひとりの限りある時間(命)を、1秒たりとも無駄にしないために。

高野 孝之 スマートライン社長 兼 CEO

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たかの たかゆき / Takayuki Takano

慶應義塾大学法学部卒業後、日本IBM入社。副社長補佐、サービス産業営業部長を経てIBM本社(ニューヨーク)コーポレートストラテジー勤務後、5社(三菱商事・日立製作所・東芝・三菱電機・日本IBM)の共同出資による株式会社ピープル・ワールドを設立、代表取締役社長に就任。1997年に日本IBMに帰任し、2001年に理事就任。IBMアジア太平洋地域の事業責任者などを歴任。2011年にスマートライン株式会社を設立、現在に至る。株式会社エクストーンなど複数企業の社外取締役を歴任し、2016年より広島県産業振興アドバイザーを務める。

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