総選挙前に知りたい2025年の「社会保障危機」 消費税「増税延期、使途変更」の余裕はあるか
一方で、これも信じられないかもしれないが、日本は先進国の中では比較的税金が安い国である。先のスウェーデンは国民所得に対する税と社会保険料の合計の比率である国民負担率が56%であるのに対し、日本は42%である。
つまり現在の日本は、高い社会保障と低い税金の国であり、常識的に考えればこの2つは両立しない。そして残念ながら2025年に、つまりあと8年で実際にそのとおり両立しなくなるだろう。なぜなら2025年を境に、社会保障に必要な金額が膨張し、それを支える力が弱まるからだ。
2025年に、団塊の世代のすべての人が75歳以上の後期高齢者になる。団塊の世代とは1947年から1949年に生まれた約800万人の大きな人口の塊を指す(現在の団塊の世代の人口は640万人)。この世代が後期高齢者となるインパクトは計り知れない。
後期高齢者になると、医療・介護費用がこれまでとは段違いに多くなる。たとえば医療費は、全国民の平均は年間30万円程度であるが、70歳で80万円、80歳になると90万円になる。また介護が必要になる人の比率は、65歳では3%程度だが、75歳を過ぎると15%に上がり、80歳で30%、90歳で70%となる。
後期高齢者の数に着眼すると、高齢社会になった1995年は720万人であったが、超高齢社会になった2010年には1400万人と倍増し、さらに2025年には、団塊の世代を含めて2200万人になると予測されている。この医療と介護の社会的費用がピークを迎える年が団塊の世代全員が後期高齢者になる2025年というわけである。
社会保障給付費がスウェーデンを上回る日
2014年の社会保障給付費は約112兆円、GDPの23%に相当する。この内訳は、医療36兆円、年金54兆円、福祉その他(介護を含む)21兆円(介護9兆円)である。この社会保障給付費が2025年までに、どのように、どれくらい増加していくか。実は何年も前からこの数値は推計済みである。
政府の推計によると、2025年の社会保障給付費は約150兆円まで膨張することが予測されている。約10年で40兆円程度、現在の給付費の35%に相当する。増分内訳は、医療18兆円、年金6兆円、福祉その他13兆円(介護11兆円)である。
ちなみに、2015年のGDPは約500兆円である。これからのGDPの成長率は名目も実質もせいぜい1~2%と見込まれる。政府はこの10年で名目のGDPを100億円程度増加させる経済計画を発表しているが、達成はそう簡単ではないだろう。そしてもし過去20年のように経済成長が停滞したら、2025年の社会保障給付費のGDP比率は約30%になる。この比率は現在のスウェーデンを上回る。
経済成長が停滞したまま、そして給付水準も維持したまま、さらに現在のように増税を先送りしたままだとすると、2025年に社会保障の財政破綻が現実のものになるだろう。
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