英メディアが日本の衆院解散を酷評した理由 これは「野党混迷」と「北朝鮮危機」への便乗だ
安倍首相の支持率は、一時、大きく落ち込んだ。学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画を巡る問題や別の学校法人「森友学園」への国有地売却問題などのスキャンダルに加え、一部の政策の不人気が原因だった。しかし、7月には30%を切っていた支持率が、9月には北朝鮮危機を背景に「50%を超えるようになった」。
ただし、「首相自身は解散総選挙がこうした疑惑(への追及)を避けるためではないと25日の記者会見で表明している」。
「憲法改正も解散理由」と指摘
解散総選挙実施のもう1つの大きな理由として英メディアが挙げるのが、平和主義を貫いてきた安全保障政策の転換だ(BBCニュース他)。今年5月、首相は憲法9条1項、2項を残しつつ、自衛隊の存在を新たに書き加える改正を提案している。今月25日、NHKの夜の番組に出演した安倍首相は、衆院選に向けた自民党の公約の中に自衛隊明記を入れたいと語った。
経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、「日本が巨額の景気刺激策を維持できるかどうかを決定し、2020年の東京五輪以降の日本を形作る」ことになるのが今回の総選挙だと見る(25日付)。
10月10日告示、22日に投開票となる選挙では、「20年以上にわたって断続的に続いてきたデフレ」を逃れるための施策を継続して実行していけるのか、そして日本の「戦争放棄をうたった憲法の改正を通すほどの政治力が安倍首相にあるかどうか」問われる、という。
国際関係では一つの勢力が突出するのではなく、それぞれの国の力が均衡していることを求めるのが英国の外交方針の基本だ。北朝鮮問題で緊張関係が高まる東アジア地域で、日本が何らかの形で好戦的な方向に憲法を改正するのかどうかは、英国の知識人のみならず一般市民にとっても、大きな関心事となる。公示の際に明らかになる公約とその行方は、今後、詳細に分析・報道されていきそうだ。
さて、与党・自民党にはどれほどの勝算があるのか。複数のメディアが引用していたのが、日本経済新聞社とテレビ東京が9月22~24日に実行した世論調査だ。次期衆院選で投票したい政党・候補者を聞いたところ、自民党が最多の44%を占めた。最大野党民進党は8%、小池氏らが発足させる予定となっていた政党への支持率は8%だった。圧倒的な自民一強である。民進党の蓮舫元代表が国籍問題等で最近辞任し、新党首が選出されたばかりと言う事情もすでに英メディアは報じている。
「野党と呼べるほどの存在は、日本にはない。小人が並ぶ中の巨人が自民党だ」(米テンプル大学のジェフ・キングストン氏、先のガーディアン紙記事)。
それでも、昨年の米大統領選のような衝撃が再来しないとも限らない。「安倍首相の賭けは大きな驚きになるかもしれない」という政治評論家森田実氏のコメントをガーディアン紙は引用している。
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