「災害で乗れない路線」実はこんなに多かった 震災や豪雨被害…復旧の見込みはいつか

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8)JR九州・豊肥本線(肥後大津―阿蘇間)

外輪山をバックに豊肥本線の列車が赤水に到着する(2008年・筆者撮影)

2016年の熊本地震と豪雨の影響により各所で寸断された豊肥本線だが、今もって肥後大津―阿蘇間は運休中で、肥後大津―宮地間で代行バス輸送を行っている。大地震の影響による斜面崩壊、地盤変状、路盤沈下など被害は深刻だ。

とりあえず、肥後大津―立野間で先行的な復旧工事を行い、その後、全線復旧へ向けた工事を行うとリリースされている。ただし、具体的な運転再開時期についてはわかっていない。この区間も豪華列車「ななつ星in九州」の運転区間であるとともに、阿蘇観光にとって重要路線だけに一刻も早い復旧が待たれる。

なお、台風18号の影響で運転を見合わせている同線の三重町―中判田間は、10月2日に運転再開の見込みだ。

9)南阿蘇鉄道(立野―中松間)

南阿蘇鉄道・立野駅に停車する列車(2008年・筆者撮影)

2016年4月の熊本地震により甚大な被害を受け、中松―高森間7.2kmは復旧したものの、立野―中松間10.5kmは不通になったままである。2つのトンネル内壁崩落、雄大なアーチ橋である第一白川橋梁の損傷など重大な被害を受けている。

第一白川橋梁の補修費用は10億円以上ともいわれ、全線復旧へのハードルは高い。国からの補助、募金などさまざまな取り組みを行っているので、わずかなりとも応援したいものである。南阿蘇鉄道応援サイトも開設されている。

鉄道復旧を断念した区間も

最後に、鉄道による復旧が断たれた路線を挙げておきたい。

10)JR東日本・大船渡線(気仙沼―盛間)気仙沼線(柳津―気仙沼間)

東日本大震災により甚大な被害を受け、2012年より仮復旧ということでBRTによる代行バスの運行を開始した。当初は、鉄道による復旧までの暫定措置という位置づけだったが、完全に復旧するには1100億円ほどの費用がかかることから、JR東日本は鉄道による復旧を断念し、BRTによる運行を本格復旧として継続したいと沿線自治体に提案した。

地元の足並みはそろわなかったが、さらなる議論が必要としていた気仙沼市がいくつかの要望を行い、一定の回答が得られたとの認識からBRTによる継続運行を受け入れることとなった。これにより、鉄道での復旧は断たれたのである。

以上、10カ所について現状と将来の見通しを書いてみたが、どこも鉄道による復旧を望んでいる。しかし、鉄道利用者のあまりの少なさ、復旧費用の膨大な金額を前に断念するところも出ているのが現状だ。災害は、これからも起こりうる。時とともに老朽化が進むローカル線の現状を見るにつけ、将来は楽観視できない。

野田 隆 日本旅行作家協会理事

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のだ たかし / Takashi Noda

1952年名古屋市生まれ。早稲田大学大学院修了(国際法)。都立高校に勤務のかたわら、ヨーロッパや日本の鉄道旅行を中心とした著作を発表、2010年に退職後は、フリーとして活動。日本旅行作家協会理事。おもな著書に『にっぽん鉄道100景』『テツはこんな旅をしている』『シニア鉄道旅のすすめ』(以上、平凡社新書)、『テツ道のすゝめ』(中日新聞社)、『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』(光文社知恵の森文庫)、『テツに学ぶ楽しい鉄道旅入門』(ポプラ新書)などがある。

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