上場企業のインサイダー取引が急増している 背景に公開買い付けや第三者割当増資の増加
ROE重視で業務提携による資本異動が活発に
その背景にあると証券監視委が見ているのは、ROE(自己資本利益率)重視の企業経営が広がる中、そうした流れを悪用する動きが拡大しているという事情だ。
ROEとは、株主が出資した自己資本をどれだけ効率的に利用し、利益を上げることができたかを示す指標。2000年代に入って外国人投資家をはじめとする株主の発言力が増す中で、ROEを重視する姿勢を打ち出す企業が増加してきた。
さらに、2014年8月には経済産業省が「伊藤レポート」を公表。「グローバルな投資家との対話では8%を上回るROEを最低ラインとし、より高い水準を目指すべき」との提案がなされた。また、2015年3月に金融庁と東京証券取引所が「コーポレートガバナンス・コード」を取りまとめ、上場企業に対して収益力や資本効率の改善などを求めた結果、4割以上の上場企業がROEの向上を経営指標に掲げるようになった。
ROEを高めるには、分子である純利益を増加させるか、分母である自己資本を減らす必要がある。地道に売り上げを増やしたり、各種費用の削減を積み重ねたりして、純利益を増やすという方法が王道だが、成熟産業ではそれも簡単ではない。その場合、業務提携や株式公開買い付けで事業分野を拡大したり、自己株を買い付け、消却することで自己資本を減らしたりするほうが手っ取り早い。
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