東武「大樹」に続く新たなSL導入の構想も 復活運転が人気、通年運転のメリット大きい

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「本日は鬼怒川温泉駅にお越しいただき、ありがとうございます。このあとSL大樹号が13時50分ごろに転車台に入線して参ります。進行方向を変えるため回転いたします」

金色の鬼の像、鬼怒太が迎える駅前に出ると、そこにも複数の駅員が立って大勢の観光客を誘導していた。今回のSL復活運転に際しての運転設備は、東武に既存の施設はなく、すべて他社から譲り受けたものを新設した。そこで鬼怒川温泉駅の転車台は、駅構内の裏側ではなく、日光市などの協力を得て、なんと駅前広場の一画に設けられた。だから、柵の周りに数百人が寄り集まってくる。

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14系客車から切り離されたC11とヨ8000は、バックで下今市方へ機回しされ、やがて再び正方向で駅前転車台へ現れる。「SL大樹号の入場です!」まさに袖から現れて華やいだランウェイを歩む、モデルそのものだ。汽笛が鳴るとどよめきが沸く。ゆっくりと転車台に載って時計回りに半回転。その途中で3回、動きを止めた。記念撮影のためだ。キャブの乗務員が満面の笑顔で手を振っている。

鬼怒川温泉駅転車台での機関車回転は、10時30分、13時50分、17時25分の3回である。朝の1号到着(9時38分)後はとくに間隔が開いているが、その理由はちょうどその時間帯が東京や日光からの列車到着、接続列車発車のゴールデンタイムだからであり「機回しの線路が空くのを待つため」だと、転車台を操作するSL検修員が教えてくれた。そのぶん、スペーシアやJR253系、会津鉄道直通の気動車など多彩な車両が入出線を繰り返す。

2列車運転、会津直通も現実の視野に

復活運転をスタートさせた「大樹」だが、計画はこれに留まらない。営業を予定する客車は6両、車掌車ヨ8000形が2両であることが、それを物語る。じつは、もう1両のSL復活が構想されているらしい。現在の207号機1両では機関車の予備がない。すると万が一の場合だけでなく、大掛かりな定期検査の際に長期にわたり運転ができなくなる。現段階では、検査年は冬期運休と考えられているが、2両を保有すれば通年営業できる。たんにSL運転が目的ではなく、それによる地域振興こそが本来の狙いであるから、ブランクは作るべきではない。

トップシーズンには2列車の運転が可能であるし、ディーゼル機の力を借りれば野岩鉄道線の長大トンネルも通過できるから、会津へ直通する長時間運転もできる。もともとC11が走っていた国鉄会津線、それが転換した会津鉄道の非電化区間をC11207が走るかもしれない。有名な大内宿や田島の前沢集落へSLで訪問できるとなれば、文化遺産同士のカップリングで関心も格段に高まるだろう。こうした未来への布石が、7月8日に実施された会津若松駅SLまつりでの、C57180「SLばんえつ物語」とのそろい踏みだったことは公然の事実だ。12系2両も復元すれば、窓が開いて本当にブラストが聞こえる列車になる。

鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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