東武「大樹」に続く新たなSL導入の構想も

復活運転が人気、通年運転のメリット大きい

改札と並行して始まったのは、ベレー帽の女性スタッフによる記念撮影サービス。ミニヘッドマークやプレートを手渡された人々が、「ハイ、タイジュ」の声にあわせて楽しそう。さらに、車内改札を終えたアテンダントは手作りの「アテンダント通信創刊号」を配付し、追って“大樹缶”のビールやグッズ等を満載したワゴンも回ってくるなど、もう次から次…。観光テイスト全開の車内であった。8月15~26日の間、5・6号のアテンダントは浴衣姿で乗務とか。

一方、車窓には霧雨に濡れた杉林や靄のかかる山並みがゆっくり流れるが、14系客車なので窓は開かない。6050系普通を待たせて通過した大桑から新高徳へは、砥川の鉄橋を境に両側とも上り勾配だから機関車はしばし力行する。しかし、汽笛は届くもののブラストは聞こえない。1号車のスハフ14は車内電源用のエンジンを稼働させているからなおさらだ。だが、車内の観光客はそうしたことは意に介さず、と言うか思いもよらない。また、窓が開いたら開いたで、煤を浴びたら汚れるということも念頭にないだろうから、その面では固定窓、そして冷房の効いた車内が具合よい。現代のSL列車の旅事情である。

鬼怒川温泉駅には駅前転車台を新設

鬼怒川を渡った新高徳駅には、急曲線続きの鬼怒川線においても最も厳しい曲線を経て進入する。特急はじめ電車も時速25kmの制限速度を受け、「大樹」は時速15km程度にまで下げる。「大樹」の最高速度は時速45kmであり、実際の運転速度は時速40km強。それに比してもゆっくりの度は著しい。景勝地を徐行しているわけではない。

鬼怒川橋梁を渡るSL「大樹」(撮影:杉山 慧)

そうした賑やか、かつスローな旅を味わううち、SL運転を機に新設(7月22日開業)された東武ワールドスクウェア駅に到着、真新しいホームに数人が降りた。1分停車で再び太い汽笛とDE10のホイッスルが響くと、終着の鬼怒川温泉駅はすぐだ。オルゴールに続く到着案内放送のあと、アテンダントがお礼で締めると拍手が沸く。

鬼怒川温泉駅は特急で着いた人や日光から来た人、あるいは帰る人々がすでに右往左往しており、そこに「大樹」が着くと、喧噪に拍車がかかる。周囲は当然人垣となり、駅員も記念撮影の手伝いに忙しい。SL「大樹」営業運転開始を祝うのぼりが立ち並ぶ改札前にも顔出し看板を楽しむ子ども連れ。改札口のカウンターには、「駅員さんがおすすめする写真撮影スポット!」や「お得なテーマパーク入場券」、キャラクターなど各種案内や商品があふれている。

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