小田急線火災、「踏切非常ボタン」に潜むワナ

検証が必要なのは鉄道側の対応だけではない

火災現場(右の建物)と線路は近接している(撮影:編集部)

今回の事故では小田急電鉄の対応にもっぱら注目が集まっているが、消防と警察の判断についても問題点の検証が必要だ。想定外といえるさまざまな原因が重なって起きた事故だが、いくつか問題がある。

まず、消防の依頼で警察が押したという踏切の緊急警報ボタンは、あくまで踏切内の危険を知らせるためのものである。たとえ警察や消防であっても「電車を止めるため」という目的以外での使用はやめるべきだ。

なぜなら、現在のATS(自動列車停止装置)やATC(自動列車制御装置)、運転司令所による中央からの運行管理の体制は、「緊急警報ボタン」が押されると「押された踏切に障害があり、その手前で列車を停止されるべき」であるとして強制力を持つようになっているケースが多いからである。小田急によると、同社の場合はボタンが押された踏切に接近している上下線の電車が自動で停まるという。その結果、火災現場の横で電車が緊急停止するという事態が発生したわけだ。

消火のネックは「架線」

火災で小田急線は約5時間半運転を見合わせた(撮影:編集部)

また、本来は電車が停止したからといって即座に線路近くでの消火作業を行えるわけではない。線路のすぐ近くで消火活動を行うには、架線からの漏電や感電の事故を防止するための措置が行われるべきだからだ。

消火活動を行う前に小田急側に何らかの連絡があったかは、同社によると今のところ情報が入っていない。

架線には、今回の区間であれば直流1500V、交流電化区間なら在来線でも2万Vという高圧電流が送電されている。万が一、通電した架線などの近くで消火活動をすることがあれば大変危険だ。もしも今回、送電の停止などについて鉄道側との連絡や確認を取る前に、電車を止めて線路付近で消火活動が始まっていたのであれば、危険な行為と言わざるを得ないだろう。

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