引越社と一従業員の「戦い」は終わっていない

都労委の救済命令に対して不服申し立て

また、引越社関東では団交後、組合員で唯一の正社員である有村有さん(仮名、35歳男性)に対し、短期間のうちに外回り主体の営業専門職から内勤のアポイント部、さらにはシュレッダー係へ配置転換を命じた。そして2015年8月中旬には懲戒解雇とした。

「会社にたてついたら一生を棒に振る」

社内に掲示された「罪状」ペーパー。会社側のこうした行為は、都労委による異例の措置を招くことになった(写真:プレカリアートユニオン提供)

懲戒解雇理由を書いた、「罪状」などと記した紙を社内に掲示するとともに、「会社にたてついたら一生を棒に振りますよ」などのメッセージを社内報に掲載し、全従業員の自宅に送付した(その後2カ月以内に有村さんの懲戒解雇は取り消されたが、職場復帰後もシュレッダー係のままだった)。

都労委の審査で会社側は、「シュレッダー係への配転は賃金や労働時間を含めた勤務条件に変更がないので不利益な取り扱いではない」「配転理由は遅刻が多いから」と主張してきた。

しかし、引越社関東では業績評価において遅刻などの勤務実態があまり重視されていないこと、遅刻を理由にシュレッダー係に配転された過去の事例が示されなかったことから、都労委は「シュレッダー係への配転は組合加入を理由とした不利益な取り扱い」と結論づけた。

また、有村さんと会社側管理職との面談で「組合、組合と言ったら何でも通ると思ったら大間違いだ」といった発言や、懲戒解雇翌日に有村さんの父親に宛てた手紙から、都労委は「労組に対する嫌悪感を持っていたことが認められる」と指摘。

そして「総合的に判断すると、従業員から処遇改善を初めて求められた引越社関東が、組合の影響力が強まることを懸念し、これを抑制することを狙って、有村さんに不利益な取り扱いをすることにより、組織拡大を抑止することにあったと見ざるをえない」と結論づけた。

そのうえ都労委は、引越社に対し、不当労働行為をやめるように命令するとともに、「都労委から不当労働行為と認定されたと社内報に記し、その社内報を全従業員の自宅に送付するように」という異例の措置を命じた。

全従業員に対し見せしめ的なメッセージを送った引越社は結局、全員に自らの不当行為を認める通知をしなければならなくなったわけだ。

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