引越社と一従業員の「戦い」は終わっていない 都労委の救済命令に対して不服申し立て
都労委の判断が不服なら、命令から15日以内に中央労働委員会に申し立てることができる。引越社は期限の9月7日までに、同委員会へ不服を申し立てた。
東洋経済の取材申し込みに対して9月13日までに回答がなかった。そのため、同社がどの命令を不服としているかは不明だ。ただ、これで闘いの舞台を都庁から厚生労働省へ一部移すことになった。
実は都労委では他の審議も続いている。先日の命令は比較的早く判断が出せそうな件のみを優先しただけで、ほかにも審議を継続している案件がいくつもある。
「会社が業界紙に組合員の自宅住所などの個人情報を漏洩したのではないか」「会社は組合を通さずに組合員と個別に和解したのではないか」「有村さんがシュレッダー係になる前にアポイント部に配属された時点で賃金が減額されたのではないか」。そして、有村さんの懲戒解雇そのものなどだ。
シュレッダー係への配転については、今年5月に和解が成立しており、有村さんは6月から労組加入前に従事していた営業専任職に復帰している。だが、有村さんを含めた組合員らによる弁償金返還や、残業代請求の訴訟(原告40人で請求金額2億円超)は今でも続いている。
「訴訟のおかげで会社はよくなった」
引越社の他の社員は、今回の件をどうとらえているのか。
40代のある社員は、「急成長した結果、会社には粗削りの部分がある。有村君が(訴訟などを)やってくれたおかげで、会社がよくなっている部分もだいぶある」と語る。
以前は残業が多く、日付が変わった後に自宅に帰ることも珍しくなかったという。しかし「今はそんなことはなくなった。週1回取れればよかった休日も、今では月10日は休むように会社に言われている」と語る。この社員によれば、個々の引越作業に達成感を強く感じ、引越作業に精通したプロ意識の高い社員が、会社を支えているのだという。
こうした社員がいる間に引越社は労働紛争に決着をつけ、労使関係の構築を図るべきだろう。そのためにはまず都労委が指摘した「労組への嫌悪」がどこに由来するのかを分析し、その嫌悪を捨てる必要がありそうだ。
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