現時点で米国と北朝鮮が交渉しても無意味だ 米ブルッキングス研ポラック氏に聞く<下>

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また、多くの政策穏健派は、過去の核問題交渉があまり成果を上げていないことを踏まえ、正式な交渉に懐疑的だ。

現在の米国の政策には一貫性が欠けている。ドナルド・トランプ政権は早くから政策レビューを行ったが、さまざまな人からいろいろなことが聞こえてきており、複雑な状態になっている。問題の一部は、トランプ大統領の予測不可能性かもしれない。加えて、マイク・ペンス副大統領は今年初め韓国を訪問した際、革製の戦闘爆撃機ジャケットを身に着け、「ミスター・タフガイ」のように振る舞っていた。

ティラーソン国務長官でさえ、初期には、最近の彼とは違う考えを示していた。そして、ニッキー・ヘイリー国連大使は、ティラーソン国務長官やマティス国防長官よりももっと懐疑的な見方をされている。

現時点で北朝鮮と交渉しても意味がない

交渉をする場合は、何を交渉するのかが問題だ。核交渉元担当者の一部は、問題がどんどん大きくなっていることから、北朝鮮の核開発計画を制限する努力が必要となっていることを懸念している。

――北朝鮮と交渉することは有益でしょうか。

金正恩朝鮮労働党委員長は、北朝鮮の核兵器の野望を拡大するうえで、父親(金正日)や祖父(金日成)よりも積極的で頑固な態度をとってきた。

したがって、私は現時点で北朝鮮と交渉を行うことについては、非常に懐疑的である。今は交渉のときではない。北朝鮮が、また違う文脈で、今までとは違う道を歩もうとするときがくるかもしれないが、現時点ではそういう兆候はない。

米国の政策立案者間に、新たな動きがある。長年にわたりわれわれは、抑止力を深く信じ、抑止力が重要な交渉の機会をもたらすと信じてきた。ところが、こうした抑止力を支持してきた政策立案者たちは最近になって、交渉をしたところで何の進歩もなかったと話すようになっている。

北朝鮮の核計画を「凍結」することは、実質的に核開発能力自体は残すことになる。もし核武装した北朝鮮とともに生き、戦争を防ぐため抑止力に頼るならば、北朝鮮政府が進んですべての計画を諦めないかぎり、交渉するメリットはほとんどない。

――米国は本当に交渉の準備をしているのだろうか。

ティラーソン国務長官は知的な人だ。しかし、国務省の重要なポジションを埋めることができなかったという人事上の失敗によって、経験や知識豊富な交渉チームを形成できなかった。また、国務省からも朝鮮問題をよく知っている専門家が減ってしまった。

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