米国でも吹き荒れる、アパレル閉店・倒産の嵐 注目され始めた「3つの新カテゴリ」とは?

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それでは、ファッションにこだわりを持っているお客さんたちはどこへ流れているのでしょう。私が今年7月にアメリカに滞在した際、支持されるブランドには「ソーシャル」「アスレジャー」「クラフトマンシップ」の3つのカテゴリーがキーワードとしてあることを肌で感じました。

まず「ソーシャル」から見ていきましょう。この消費のポイントは「自分の購買行動が社会にどのような影響を与えるのか」という点で、フェアトレード、オーガニック、エシカルなどのトピックスに関心を持ちます。金銭的に余裕のある層だけでなく、ミレニアム世代にもその傾向が強いように思いました。

NY5番街に洋服の山を展示

ソーシャルの一例となるのが、ラグジュアリーブランド「ヴェトモン(VETEMENTS)」のあるキャンペーンです。アパレル業界の過剰生産に対する問題提起として、ニューヨークの5番街にあるサックス・フィフス・アベニューのウィンドーに洋服の山を展示しました。洋服の山は、百貨店の在庫や従業員の古着で構成されており、「ヴェトモン」の公式インスタグラムでは、「アメリカで売れ残っている洋服の在庫は、年間500億ドル(約5兆円)に達する。過剰生産を防ぐことこそが、サステイナビリティや二酸化炭素排出量の削減につながる最もシンプルな解決方法だ」と、その狙いを語っています。

デザイナーズブランド、「ステラ マッカートニー(Stella McCartney)」のノーファー宣言や、急成長するメガネブランド「ワービー・パーカー(Warby Parker)」が掲げる「1つメガネを買えば、途上国に1つメガネが寄付される」という仕組みも、ソーシャルというキーワードに当てはまる例と言えるでしょう。

ソーシャルなブランドの支持層は、多くがデジタルネイティブ世代。マスメディアで流れないファストファッションの裏側にある事情も、日々触れるデバイスの中からごく当たり前に情報収集しています。

次に「アスレジャー」について見ていきましょう。数年前から流行り始めたアスレジャーという言葉は、アスレチック(運動競技)とレジャー(余暇)を組み合わせた造語で、機能的なウエアを中心とした動きやすいコーディネートが特徴。健康志向が高まっている中、素材や機能にこだわったアイテムでトレーニングやスポーツ、ヨガといったワークアウトの時間を楽しみたいという人たちが増えているのです。

注目ブランドの一つ、2017年創業の「ミニストリー(Ministry)」は、ドレスウエアにおいても消臭や吸湿速乾、通気などの機能性を追求しており、ついには宇宙服に使われている体温調節素材まで取り入れてしまうほど。こういった技術力の高さも、アメリカの人たちの心をしっかりとつかんでいます。

そして、3つ目のキーワードが、「クラフトマンシップ」です。この火付け役となったのは、“感覚に敏感な者”という意味を持つヒップスターたち。ヒップスターの聖地といわれるブルックリンから「丁寧に作られたものを長く大切に使う」という価値が見いだされ、ほかの州にも徐々に影響を与え始めています。

代表的なブランドとして挙げられるのが、デトロイトの自動車メーカーから転身を遂げた「シャイノーラ(SHINOLA)」。アメリカの製造業を守るという理念を掲げ、商品はすべて国内で製造しています。職人たちがハンドメイドで生み出す腕時計は、バラク・オバマ前大統領も愛用するほどのクオリティ。今では自転車や革製品、文具、洋服などの製造も手掛けており、ラインナップは年々増えていくばかりです。

「シャイノーラ」の店内には工房があり、買ったアイテムにその場で刻印を押してくれるサービスもあります。私がニューヨークの店舗を訪れたときも、多くのお客さんが興味深げに職人さんの作業を見つめていました。

今回ピックアップした3つのカテゴリーは、必要なモノやサービスに満たされた成熟社会において、どれも精神的豊かさという本質的な価値をもたらしていくものといえます。今はトレンドとして認識されていますが、私はブームの移り変わりや志向性の変化によって淘汰されることはないと推測しています。トレンドがカルチャーに昇華していくプロセスを、今後も追っていきたいと思っています。

山田 敏夫 ファクトリエ代表

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やまだ としお / Toshio Yamada

1982年熊本県生まれ。大学在学中、フランスへ留学し、グッチ・パリ店で勤務。卒業後、ソフトバンク・ヒューマンキャピタル株式会社へ入社。2010年に東京ガールズコレクションの公式通販サイトを運営する株式会社ファッションウォーカー(現:株式会社ファッション・コ・ラボ)へ転職し、社長直轄の事業開発部にて、最先端のファッションビジネスを経験。2012年、ライフスタイルアクセント株式会社を設立。2014年中小企業基盤整備機構と日経BP社との連携事業「新ジャパンメイド企画」審査員に就任。2015年経済産業省「平成26年度製造基盤技術実態等調査事業(我が国繊維産地企業の商品開発・販路開拓の在り方に関する調査事業)」を受託。年間訪れるモノづくりの現場は100を超える。

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