まず、核保有国がいっさい支持していないため、この条約では核弾頭は一つも減らない。さらに問題なのは、この条約でNPTが弱体化するおそれがあることだ。国連常任理事国5カ国(中国、フランス、ロシア、英国、米国)を含む広範な国から支持を得ているのはNPTだ。
そして、核抑止力をも条約違反としたことで、核兵器禁止条約は同盟国の核の傘に守られている欧州と東アジアの安全を現実に危険にさらす可能性がある。
全面的な核軍縮は一気にはなしえない
当初草案には、核を抑止力とすることを明確に禁じる文言はなかったが、7月に採択された最終案は違った。これは重大な変更だ。
条約の支持者は、核兵器禁止の世論が高まれば、核保有国は核を放棄せざるをえなくなると言う。あまりに浮き世離れした考えだ。単に国際的な批判が高まるだけで、中国、イスラエル、パキスタン、ロシアが素直に核兵器を手放すだろうか。少しでも現実を知っていたら、誰も真に受けない話だ。
結局のところ、全面的な核軍縮は一気にはなしえない。それより、NPTに基づく漸進的アプローチのほうが目的にかなうだろう。
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