バノン首席戦略官が解任されたのは当然だ トランプ政権内に敵を多く作りすぎた

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バノン氏は、反エスタブリッシュメント(既得権層)の思想を身にまとっていた。だが、彼のポピュリズムは偽物だ。政治的にはブルーカラー層の利害を代弁しながら、ゴールドマン・サックスでの勤務、そして人気コメディ番組「となりのサインフェルド」への投資によって数百万ドルもの大金を手に入れたのがバノン氏である。

同氏は、億万長者マーサー一族の後ろ盾を得て頭角を現した。ヘッジファンドによって財を成したマーサー一族は、過激な排外主義と白人至上主義を掲げる極右メディア「ブライトバート・ニュース」のスポンサーであり、その会長を務めていたのがバノン氏だ。

どこにでも首を突っ込んだことが致命傷に

バノン氏はホワイトハウスの排外主義路線を強化し、その結果、トランプ氏は長女イバンカ氏や経済諮問委員の反対を押し切って気候変動パリ協定から脱退。バノン氏は国家安全保障会議のメンバーとなり、外交にも立ち入った。そして、国家安全保障担当のマクマスター補佐官とケリー現首席補佐官によって更迭された。バノン氏を「ホワイトハウスのラスプーチン」と見るのは間違いだった。

バノン氏は所管を持たない知恵袋としての役割をトランプ氏から与えられていたが、これがあだとなった。責任範囲が明確でないのをいいことに、バノン氏はどこにでも首を突っ込むことができた。そして多くの敵を作った。バノン氏は敵対する人物についての情報をマスコミに流し、トランプ氏はバノン氏がホワイトハウスの情報を漏らしていると考え始めた。

バノン氏は、トランプ氏が大統領選挙に勝てたのは、自分が果たした功績が大きいとほのめかした。自らの虚栄心のせいで、最も危険な領域へと足を踏み入れてしまったのだ。両者の関係は決定的にこじれた。そしてホワイトハウスのはみ出し者は、ついに放逐されたのである。

エリザベス・ドリュー ジャーナリスト

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エリザベス・ドリュー / Elizabeth Drew

近著に『ウォーターゲート事件とニクソン失脚に関するリポート』がある

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