九州人が「乗りたい」「残したい」ローカル線 九州ならではの風景を満喫できる5線

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子連れだったら、子どもも楽しめるくまモンラッピングの車両を利用してはどうだろうか。沿線と海に近い御立岬公園では、コテージやキャンプ場で宿泊することもできるので、家族連れで楽しめそうだ。

平成筑豊鉄道 田川線(行橋―田川伊田)

1989年に第三セクターの平成筑豊鉄道株式会社(通称:へいちく)が設立され、旧JR九州と日本貨物鉄道株式会社(JR貨物)の路線経営を引き継いだ。田川線は福岡県にある非電化単線のローカル線で、通学などに使われている。

へいちくの車外内のデザインはシンプルかつスマートな印象で、沿線の田園風景との調和も面白い。モダンで落ち着いたデザインの車両が、自然豊かないわゆる「田舎」を走り抜ける姿はユニーク。車窓からは、情緒のある町並みや、のどかな田舎景色が望める。元鉱山の山稜を背景に季節によって色彩が変わる田んぼが遠くまで続き、春には桜、秋には紅葉と、水彩画の世界に入り込んでいくような感覚に陥る。

しかし、過疎化や少子高齢化による利用者は減っている。同社ウェブサイトやPR資料には「乗って残そうへいちく!!」と書かれており、九州人としては、乗り心地がよくて、風景も美しいこの鉄道はぜひ残してほしいと思っている。ちなみに、同社はこのほかにも、伊田線(直方―田川伊田)と糸田線(金田―田川後藤寺)、門司港レトロ観光線を運営しており、どれも乗りがいがある。

車窓から眺めるトロピカルな風景

JR日南線(南宮崎―志布志、宮崎発着もあり )

宮崎の南部は、九州の人でもあまり行かない、知られていない所が多くあるが、ほかでは見られないような美しい自然も豊富だ。沖縄のようなトロピカルな雰囲気で、南国の草木や柑橘類があふれるこの地域を、大きな葉っぱを押しのけるように鉄の上をゆっくりと進む鈍行列車がある。日南線だ。

ユニークな南国風景が車内から見られる日南線(写真:こっく / PIXTA)

宮崎軽便鉄道の経営下、100年以上前(1913年)に赤江(南宮崎)と日南地方を結ぶ路線として開業し、今も単線のままで走っている。キハ40形とキハ47形で、白に青い横線または黄色に青いイルカマークといった車両デザインも懐かしい雰囲気を醸し出す。接続していた大隅線、志布志線ともに1980年代に廃線となり、人気の「海幸山幸」というおしゃれな観光列車が走っているにもかかわらず、人口減少や高齢化といった理由で利用者は減る一方だ。

こんなユニークな南国風景が車内から見られるのは、全国で日南線だけかもしれない。沖縄や海外と比べても遜色のないほど美しいビーチも数多くあり、戦後時代に新婚旅行先として潤った理由は一目でわかる。途中の青島駅には、ビーチのほかに、青島神社や「鬼の洗濯岩」など観光スポットが多数あり、1泊しても大いに楽しめる。

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