九州人が「乗りたい」「残したい」ローカル線 九州ならではの風景を満喫できる5線
近年、輸送密度の低いローカル線の存廃に注目が集まっている。たとえば、北海道旅客鉄道株式会社(JR北海道)は昨年12月、利用者の少ない留萌本線の留萌―増毛間の運転を廃止したほか、昨年11月には路線網を見直す方針を発表している。こうした中、九州に住む者として今後、九州のローカル鉄道がどうなるのか案じずにはいられない。
2016年に上場した九州旅客鉄道株式会社(JR九州)は上場に際し「路線の維持に努めていく」と表明しているため、すぐに廃線させたりすることはないだろうが、地元では、日南線や指宿枕崎線、肥薩線の一部区間の廃止などがうわさレベルとはいえ、取りざたされている。JR以外にも、2007年に西日本鉄道株式会社(西鉄)が旧宮地岳線(貝塚線に改称)の西鉄新宮―津屋崎間を廃止し、人口の多い福岡県以外に過疎化が著しい地域では、利用者が少ない私鉄や第三セクター鉄道線が決して安全な状態だといえない。
九州ローカル線の魅力
乗客が少ないローカル線とはいえ、その存廃はこうした路線を利用する地元民にとっては重要な問題だ。また、鉄道は大切な社会インフラだけでなく、場合によっては貴重な観光資源にもなりうる。こうしたローカル線を残すためには、「応援」するために乗るしかない。が、その動機は「なくしたくない」というネガティブなものではなく、「九州ローカル線の魅力を体験したいから乗りたい」というポジティブなものであったほうがいいだろう。
九州ローカル線の魅力を簡単にいえば、人と景色だ。地形のバリエーションが豊かな九州7県には、狭い谷と高くそびえる岳や、個性豊かな灘や入り江、靄(もや)に包まれた山脈がたくさんある。桜島や阿蘇山をはじめ、頻繁に煙を吐き出す火山も点在し、南の鹿児島と宮崎のジャングルっぽい亜熱帯気候から、農業が盛んな佐賀やにぎやかな福岡、温泉の蒸気が街並みから立ち上る大分まで、ひとつの地方でこんなに多様な景色が共存するのが九州の面白さである。
こぢんまりとした港町、真っ白な蔵元の壁、赤煉瓦(れんが)工房――など、昔ながらの日本がそのまま残り、車窓からゆっくり眺められる。乗りながら温泉に泊まりたい、という人にも九州ローカル線の旅はオススメだ。
また、九州人はとても温厚で、フレンドリー。よそから来た観光客にもすぐに話しかけたり、喜んで道案内や地域の説明をしたりしてくれる。鉄道旅の醍醐味は何も路線の景色や名勝、食べ物だけに限らない。地元の人々と触れ合うことで、旅の思いではより多彩なものになるはずだ。ここでは、こうした視点から、九州に来たらぜひ試してもらいたいローカル線を5線紹介したい。
肥薩おれんじ鉄道線(八代―川内、熊本・鹿児島中央までの直通もあり)
熊本と鹿児島を結ぶこの第三セクター鉄道は、もともと鹿児島本線という南北在来幹線の一部だったが、九州新幹線の鹿児島中央―新八代間の2004年開業後、肥薩おれんじ鉄道株式会社に運営が移った。
海が好きなら、おれんじ鉄道は気に入るだろう。海岸沿いに走る区間が多く、線路の真下近くまで波が来るほど海辺に近い。沿線風景は、まさに九州の田舎そのものだ。起点駅(八代)で売店兼八百屋を切り盛りしているおばさんから手作り弁当を買って乗り込めば、電車で食べながら目の前に広がる八代海と東シナ海、隠れた農村、そして天草諸島の絶景が満喫できる。全線に乗る余裕がなければ、八代―たのうら御立岬公園間が特におすすめだ。
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