JR東日本が英国で鉄道運行する「本当の狙い」

日本のトップ企業も海外の知名度は低かった

ウェストミッドランド路線は、ロンドンのユーストン駅を起点とする西海岸本線のルートを通り、バーミンガム、クルー、リバプールといった都市間を結ぶ近郊列車や、西ミッドランド地方のローカル線など、約900kmに及ぶ路線網で、年間延べ7400万人が利用する。今回、フランチャイズを獲得したウェストミッドランズ・トレインズ社は、2017年12月にすべての事業を引き継ぎ、正式に営業を開始する。

アベリオUK社のマネジングディレクターであるドミニク・ブース氏は、契約期間満了となる2026年までの間に、旅客サービス向上のために新型車両の導入や駅設備の改善など、約10億ポンド(約1430億円)の投資を行うと述べている。

その具体的な投資内容として、以下の点などが挙げられている。

●バーミンガム都市圏で使用されている近郊車両を更新するため、ロンドンのオーバーグラウンドで使用されているものに類似した、客室面積やドア幅を拡大した180両の新型車両を2021年までに順次導入する。車両のメーカーは協議中。
●2021年までに、ロンドンを起点とする近郊列車へ新型車両を225両導入、既存車両は順次更新する。この新型車両導入により、バーミンガム周辺で2万席、ロンドン近郊で1万席の座席と5000人分の立席スペースが増え、混雑緩和および着席サービスの向上を図る。
●本数が大幅に減る日曜日も含め、運行本数を増やす。
●本線で使用される車両については、2019年末までに無料Wi-Fiを導入、また2021年5月までに、ラップトップPCや携帯電話の充電設備を設置する。
●ロンドン近郊で働くパートタイム従業員の利用を想定し、オフピーク時間帯にお得な割引乗車券を導入。
●15分以上遅延した場合は運賃の25%、30分以上は50%、60分以上は全額の払い戻しを行う。
●サポートを必要とする乗客へのサービスを向上を図る。
●スマートフォンなどの情報端末を利用した、リアルタイムの混雑状況案内提供。

なぜJR東日本が参入?

新生ウェストミッドランド・トレインズ社は、新型車両投入を計画している。新型車両は、オーバーグラウンドの車両(写真左)に類似した、快適性とキャパシティを両立した車両となる予定だ(筆者撮影)

また、今回のフランチャイズ獲得に合わせ、インフラを管轄するネットワークレイル社とも連携、新型車両導入のために車庫の拡張、各駅に合計で1000台分の自動車駐車設備と2500台分の自転車駐輪設備を整備しパークアンドライドを推進、150駅に最新の情報案内装置を合計で800台設置するとしている。

なお、バーミンガム周辺を含むウェストミッドランド地域のローカル列車については、運輸省と同地域にある16の地方自治体によって構成される「ウェストミッドランド鉄道コンソーシアム」という組織によって共同運営され、車両についてはウェストミッドランズトレインズ社が提供するとしている。

しかしJR東日本はなぜ、英国の鉄道事業参入に名乗りを上げたのか、しかもその出資比率は、共に手を組むアベリオUK社に対して半分以下と、かなり低い点を疑問に思うだろう。日本最大、いや旅客輸送事業の売上高に関して言えば世界最大の企業であるJR東日本が、日本国外、それも英国の鉄道事業へ参入する意義、メリットとは何なのだろうか。

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