JR東日本が英国で鉄道運行する「本当の狙い」 日本のトップ企業も海外の知名度は低かった

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以前、日本企業の知名度について調べたことがあるが、自動車メーカーなど、多くの人が目にする企業名以外は、決して知名度が高いわけではない。世界でこれだけ、「日本製品の性能と品質、そして提供されるサービスは世界最高水準」と言われているにもかかわらず、実際名前を聞いても、それが日本企業とわかる人は多くない。

もちろん、JR東日本という日本の一地域の鉄道企業を一般の人が知っている確率は、限りなく低い。英国で活躍する高速列車「ジャベリン」を開発・製造し、性能や信頼性で高い評価を得た日立製作所にしてもそうだ。日本人の中で、DBAG(ドイツ鉄道)やSNCF(フランス国鉄)、シーメンスやアルストムと聞いて、何の会社かすぐにピンと来る人がどれだけいるだろうか。それと同じだ。

だが、日本政府による日欧経済連携協定(EPA)の交渉は最終局面を迎え、まもなく世界の国内総生産(GDP)の約3割を占める巨大な自由貿易圏が誕生しようしているなか、今後はますます、資材などの国際調達などが加速していく可能性を秘めている。これまで日本の関東・東北地方を中心とした、非常に限られた地域を活動の中心としてきたJR東日本だが、今後は世界を股にかけて事業を行うグローバル企業へと飛躍するチャンスでもある。

その時、海外の業界関係者の間でその認知度が低かったとしたら、いかに安全性や安定運行のノウハウを持っていたとしてもはなも引っかけてもらえまい。つまり、同社の名前を鉄道先進国であるヨーロッパ各国の業界関係者に広く知ってもらううえで、今回のフランチャイズ獲得ほど絶好の場所はないと言えるだろう。

海外事業のノウハウ吸収にも利点

ロンドン・ミッドランドのブランドで運行される、現在のウェストミッドランド路線の列車。2017年12月からは新ブランドへ変更される(筆者撮影)

また、JR東日本としては、今回が初の海外における鉄道運営となる。日本の鉄道業界ではトップ企業として多くのノウハウを持つ同社だが、それはあくまで日本におけるもので、それをそのまま海外へ持ち込んだとしても、すぐさま通用するものではないことは、日本の他業種でも多く目の当たりにしてきた部分だ。

アベリオ社はもともとオランダの企業で、今回手を組むアベリオUK社は英国子会社に当たるが、海外オペレーションという点において、すでに多くの経験と実績を持っている。その同社と手を組むことで、海外における運営方法などのノウハウを吸収できるというメリットは大きい。将来、自社単独による海外事業参入への布石ともいえる。

これは、逆の視点で考えることもできる。アベリオ社にとって、日本の鉄道会社と手を組むということは、日本の鉄道業界をよく理解する絶好の機会となるわけで、将来的に日本の鉄道業界への参入ということも十分に考えられる。日本では赤字ローカル路線の運営に悩む鉄道会社が少なくない。海外オペレーターの日本への進出が、赤字ローカル線問題などに一石を投じることへつながるかもしれない。

英国の鉄道業界で、JR東日本がどのような形で足跡を残していくのか。今から目が離せない。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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