マツダが「革命エンジン」に込めた強い意地 逆風が吹いても、内燃機関を磨き続ける

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しかし今回は、7年前と情勢が異なる。スカイアクティブXに勝算はあるのか。藤原専務は「2040年の欧州での規制も、完全なEVだけを容認するわけではないと解釈している。2035年時点でもハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)など、内燃機関を搭載した車が世界販売の85%を占めるとの予測もあり、内燃機関を磨くことがCO2削減につながるという考えに変わりはない」と持論を展開した。

ただ規模の小さいマツダ1社で、この考え方をどこまで自動車業界で浸透させられるかは疑問が残る。自動車業界では、「発電や製油については、エネルギー業界が考えるべき部分」と見るのが一般的だ。

一般消費者への理解もまだ広がっていない。藤原専務は「米国の一部の州では、Well to WheelでのCO2排出を個人が確認できるシステムが既にある。地球温暖化に感度の高い人は使っている」と、今後の理解に期待するのみだ。

規制対応にはEV開発も不可避だった

小飼雅道社長は新型エンジンに加え、EV戦略についても説明した(記者撮影)

米カリフォルニア州などでは、2017年秋以降に発売されるモデルを対象として、走行中に排ガスを出さない車を一定以上の割合で販売することを義務化するZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)規制が始まる。中国でも同様の規制がまもなく適用される。

直近の規制対応には、エンジン車だけでは限界があるのも事実だ。そのためマツダは、2019年に2種類のEVを投入する予定だ。マツダ独自の技術である「ロータリーエンジン」を発電機にして航続距離を伸ばす「レンジエクステンダーEV」と、ZEVなどの規制に対応するためのバッテリーのみのEVだ。

8月4日に発表されたトヨタ自動車との資本業務提携では、トヨタとEVの基幹技術を共同開発することも明らかになった。これは、さらに次の世代のEVに向けての取り組みとなる。「地域特性に合った商品投入ができるよう、準備を整えていく」と小飼社長が繰り返したとおり、規制が急激に厳格になった場合でもEVで対応できるようにする。

スカイアクティブXが実車に搭載されるまで、あと2年。しかし多くの自動車業界関係者が驚くように、世界のEV化のスピードは予想以上であり、商品投入までにも多くの変化が予想される。社運を懸けた”革命エンジン”は、マツダをさらなる高みへと導けるのだろうか。

森川 郁子 東洋経済 記者

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もりかわ いくこ / Ikuko Morikawa

自動車・部品メーカー担当。慶応義塾大学法学部在学中、メキシコ国立自治大学に留学。2017年、東洋経済新報社入社。趣味はドライブと都内の芝生探し、休日は鈍行列車の旅に出ている。

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