ジャパンディスプレイ、4期連続赤字で孤立 筆頭株主の産業革新機構は撤退に布石

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昨年12月にJDIが資金繰りに窮した際も、革新機構は750億円(300億円が劣後特約付借入、450億円が新株予約権付社債)の追加出資を実施。しかし、革新機構はあくまで産業にイノベーションをもたらす企業などに出資するのがその使命だ。一民間企業であるJDIの救済に公的資金を投下するのは建前上難しいため、有機ELの開発という名目を用意し、批判回避を狙った経緯がある。

東入來会長に耳打ちする、設立当初から経営に携わる有賀修二社長兼COO(左)(撮影:大澤誠)

革新機構は今回の支援に対して「今般、策定されたJDIの構造改革プランは、JDIの持続ある成長への不退転の決意を示すものであり、革新機構としてその完遂を支援するとともに、必要な資金の調達についても債務保証という形で支援を行うことを決定しました」とのコメントを発表している。

革新機構は債務保証をすることで支援の姿勢を打ち出したように見えるが、実情はそうではない。JDIから手を引く布石を打っているのだ。

というのも、今回の債務保証にはある条件が付随している。革新機構のJDIに対する出資比率は35.58%(3月末現在)だが、革新機構の出資比率が20%以下になった場合、もしくは第三者の出資比率が20%以上となった場合に、連帯保証を解除できるのだ(そのほか、JDIが債務超過となった場合や倒産手続きを開始した場合も同様に解除できる)。

パートナー企業を見つけられるのか

さらに、昨年末に援助した750億円についても、革新機構の出資比率が20%以下になった場合、もしくは第三者の出資比率が20%以上となった場合、革新機構へ返還するという条件をJDIにのませている。この条件からは、革新機構は「JDIの当面の運転資金は保証するものの、JDIには新しい支援者を早期に見つけ、昨年末に拠出した750億円を返すように迫っている」とも読み取れる。

この方針転換に、JDIも戦略の変更を余儀なくされている。会見で東入來会長は「(JDIに資金援助してくれる)グローバルパートナーを12月をメドに見つける」と説明した。ただ、JDIが目指す有機ELパネルの量産化には数千億円規模の投資が必要といわれるが、そのためには「グローバルパートナー」からまとまった金額を引き出す必要がある。

「出資しようという会社が現れるのか」という記者の問いに対し、東入來会長は「ディスプレーメーカーや投資ファンドなど、いろいろな選択肢がある。具体的なことは決まっていない」と話すのみで、パートナーを本当に見つけられるかは不透明だ。東入來会長が語った「12月がメド」というスケジュールからは、早期にジャパンディスプレイから資金を引き上げ、年度末をメドに目指す東芝メモリの買収に備えたい革新機構の思惑も透けて見える。

一方、JDIは「グローバルパートナー」が見つからなければ、液晶から有機ELに需要がシフトする中で有機ELの量産化が遅れ、さらなる苦境に立たされる可能性もある。革新機構に翻弄される日の丸液晶企業はリストラを経て、今度こそ利益を出せる会社となれるのか。道のりは長い。

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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