「辞任」「解任」続出で混迷深まるトランプ政権 ホワイトハウス中枢で止まらぬ人事の混乱
今回、大統領首席補佐官に就任したケリー氏は元海兵隊大将であり、国土安全保障長官として国境管理の強化などに取り組んできた。だが、大統領首席補佐官というポストは、政権の要として、とりわけ議会対策について重要な役割を担う。ちなみに、元軍幹部が大統領首席補佐官に就任した事例は非常に少なく、ウォーターゲート事件当時、リチャード・ニクソン大統領と、副大統領から後任の大統領に昇格したジェラルド・フォード大統領に仕えたアレクサンダー・ヘイグ氏(第1期レーガン政権で国務長官に就任)以来となる。
今後、ホワイトハウス内の混乱を抑えられるか
トランプ政権下のホワイトハウスは内部対立やメディアに対する意図的な情報のリーク(漏洩)などが日常茶飯事となっており、混乱をさらに助長する結果を招いていた。こうした状況に対してプリーバス氏は適切に対応できなかったため、トランプ政権の不安定さを有権者に印象付けることになった。まずこうしたホワイトハウスの従来までの状況を変革し、ホワイトハウスに規律を導入することがケリー氏の最初の取り組みとなる。
その一環として、これまでは主要幹部であれば自由に大統領執務室に出入りできた状況を改め、たとえトランプ大統領の長女イヴァンカ・トランプ大統領補佐官であっても、娘婿ジャレッド・クシュナー大統領上級顧問であっても、ケリー氏の許可を必要とするかたちに変更した。
ただ、ケリー氏の不安材料として、議会折衝を挙げなければならない。国土安全保障長官当時の信頼の厚いスタッフを配置するとともに、現在、議会折衝を担当しているマーク・ショート立法担当部長の他に、議会折衝に長けた人物をさらに迎えることも不可欠となろう。そうした取り組みによって、優先法案であったオバマケア代替法案頓挫からの立ち直りを図り、減税や法人税引き下げを柱とする税制改正などの次の主要な立法課題に取り組むための第1歩としなければならない。
(文:足立正彦/住友商事グローバルリサーチ シニアアナリスト)
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